夜明けの祈り ～フランス映画祭2017より～

第二次世界大戦終戦直後のポーランドを舞台に描いたドラマです。
当時、ポーランドに赤十字の医師として赴任していた女性の手記をもとにしたと聞いて気になっていました。
やっぱり戦争は酷いなあとため息をつくような、心が痛くなる物語が綴られていました。

1945年12月のポーランドでは、戦争が終結したと言っても
まだ各国の兵士が傷付いた状態でいるようなありさまでした。
医師として勉強を積んできたフランス人のマチルド（ルー・ドゥ・ラージュ）は家族の反対を押し切って
いまだ危険な状況下にあるポーランドで赤十字の医療活動に参加していました。

ある日、フランス赤十字の病院を訪れた地元の修道女の少女がマチルドへ声を掛けます。
女性が死に瀕しているので助けて欲しいと訴えてきたのです。
でも、マチルドの医療活動はフランス人に限定されていて、地元の人へは出来ません。
そう言って少女を帰したマチルドですけど、少女が雪の中で静かに祈り続けている姿を見て、
どうしても見捨てられないと手を貸す決意をしました。
でも、車でたどり着いた修道院で観たものは、彼女の想像を超えた事態でした(T_T)

それにしても、哀しくてショッキングな物語でした。
戦争が終わっても、本当に女性たちは苦しみが続くものなのですね(T_T)
修道女たちは突然にやって来たソ連兵に襲われ、7人もの少女たちが臨月を迎えていたのです。
死にそうになっていたのは、月足らずで陣痛が起きてしまった少女でした。

出産時の知識は浅いながらも、医学書を手に帝王切開をしたマチルドは、何とか赤ちゃんを取り上げます。
でも、ソ連兵が襲ってきたのは3日間で、残りの少女は出産予定日が一緒なのです。
マチルド一人の手に負える事態ではありません。

また、生まれた赤ちゃんの行き先も微妙でした。
最初は院長が少女の親戚の家へ引き取ってもらったと聞いていたのですけど、様子がおかしいのです。
そして、一人の少女の自殺をきっかけに、院長の行為の真実が見えてきます。
実は個人的にはソ連兵の蛮行よりも院長の方がショックでした…

映画の後に行なわれたQ&Aでも院長の行為についての質問がありました。
その時の監督の答えに、一番いけなかったのは彼女一人で決めてしまったことだという言葉がありました。
院長になったほどなので、敬虔な修道女だったことには違いありません。
それがこの非常事態の中で責任感に駆られて決意したとは言え、
本当に大切なことは何かを見失ってしまったのです。
やっぱり、独裁というのは善意でも歪んでいくのだなと怖くなりました。

作品自体は未来を感じられる展開になっていてほっとしました。
でも、やっぱり印象に残ったのは、戦争がもたらす様々な非情さだったなと感じた1本です。



監督：アンヌ・フォンテーヌ　出演：ルー・ドゥ・ラージュ　アガタ・ブゼク　アガタ・クレシャ　ヴァンサン・マケ―ニュ
2016年　フランス／ポーランド　原題：Les Innocentes
（20170624）

→公式サイトはこちらへ　http://yoake-inori.com/
→フランス映画祭の公式サイトはこちらへ　http://unifrance.jp/festival/2017/films/les-innocentes

追伸
この映画はフランス映画祭2017で観ました。公開は8月5日以降の予定です。