アメリカでNo.1の総視聴者数を誇るＦＯＸニュースを実質的に動かしているのは
経営者ではなく2FにいるCEOロジャー・エイルズ（ジョン・リスゴー）です。
彼は女性キャスターを意欲的に取り入れたカリスマ的なCEOで、
女性の足を見せる演出効果により高視聴率を上げてきました。
しかし、ロジャーは女性に対するセクハラ行為を常習的に行っていて、
彼に対する“忠誠心”がその行為で示されると
メインキャストに取り上げてくれるということは女性たちには公然の秘密でした。
地方のテレビ局からＦＯＸニュースに入社したケイラ（マーゴット・ロビー）は
まだその事実を知りませんでした。
ケイラはメイン番組から小さな番組に移されていたベテランキャスターのグレッチェン・カールソン
（ニコール・キッドマン）の下で働いていましたけど、
両親が見るようなメイン番組のキャストになりたいと考えていました。
ある日、彼女はロジャーに自分を売り込もうと2Fに乗り込みます。
そんな彼女の姿を見たベテラン秘書は笑顔でロジャーの部屋に引き入れます。
そこはケイラの想像を超えた“忠誠心”を試される場になっていました。
それにしても、これが2016年の話なのですね。
これだけ女性が輝いていると思っていたアメリカでもこんな状態なのだなあと思うと切ないです。
この訴訟以降、少しは被害が減少しているのでしょうか。
この訴訟でＦＯＸニュースを退社したロジャー・エイルズがその後、
当時は大統領候補だったトランプ大統領のパーソナルアドバイザーになったのですよね。
それだけでも何だか不安になってしまいました(-_-)
また、この作品は女性の心情によく寄り添っているなと感じました。
計画的に準備をして訴訟を起こしたグレッチェンは孤独に耐えます。
結局は彼女独りでは状況は弱く、誰か自分に続く女性がいると信じて待つことしかできません。
ロジャーに気に入られているメーガン・ケリー（シャーリーズ・セロン）も、
過去のセクハラ行為を心の底に仕舞い込んでいました。
彼女は自分も訴訟に参加することの影響の大きさを苦慮するのと同時に、
自分のイメージを壊されるセクハラ被害者というレッテルを恐れます。
彼女が思う後悔の言葉は一筋縄ではいかない心の揺れを感じさせました。
そして、ケイラは被害者たちの総合的なキャラクターらしいですが、
弱い立場のものがこんな被害に遭うのだなと解りやすく伝えています。
実は彼女のキャラクターが一番身近で分りやすいと感じました。
またその反面、ロジャーに恩を感じて援護しようとする女性たちも多く、
それまでどれほど女性たちが差別を受けやすい社会だったのかを想像させられました。
エンターテイメントとしてはそれほど大げさな作品ではありませんが、静かな緊張感があって
いろいろと考えさせられる作品でした。
観終わった時、こういう作品をしっかりと映画に出来るハリウッドの強さを感じた1本です。
監督：ジェイ・ローチ 出演：シャーリーズ・セロン ニコール・キッドマン マーゴット・ロビー ジョン・リスゴー
2019年 カナダ・アメリカ 原題：BOMBSHELL
（20200226）
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公式サイトはこちらへ https://gaga.ne.jp/scandal/