『デリート・ヒストリー』ネットがもたらす社会問題と、低所得の人々が直面している現状を合わせ技で描いた社会派ドラマです。
メインの登場人物は低所得者層向けの住宅地に住む3人のご近所さんたち。
離婚して夫と息子に去られた主婦マリーと、妻を亡くしたショックで働けなくなったベルトラン、
職場での失敗で仕事を失った末に離婚してタクシードライバーとなったクリスティーヌです。
高校生の息子を持つ主婦だったマリーは離婚されて子供も取られ、荒れた日々を送っています。
妊娠して学校を中退したまま働くことの無かった彼女は、離婚後は無職で生活に困っています。
今できる唯一の収入源は家の中のものをネットオークションに出品することくらいです。
そんなギリギリの生活なのに、ついアルコールで憂さ晴らしをしてしまうのが彼女の悪いところ。
酒癖が悪い彼女はバーで若い男と意気投合したあげくにベッドシーンの動画を撮られてしまい
ネットに公開されたくなければ金をよこせと脅迫されてしまいました。
妻を亡くし一人娘と二人きりになったベルトランの今一番の悩みはネットいじめです。
彼の娘が同じ学校の同級生にいじめにあっている上に、その動画がアップされてしまっているのです。
現状を学校へ訴えようとも上手くいきません。
また、彼はネット通販にはまってしまい、お金が無いのに家の中は新製品だらけになっていました。
タクシードライバーのクリスティーヌの悩みは
タクシー会社が導入している客からの評価システムの星が少ないこと。
どんなに気を使って客に気に入ってもらおうとしても、努力が空回りして星はひとつのままです。
ネットの評価が低ければ自分のタクシーにお客が乗ってくれず給料も上がりません。
困った彼女はネットの評価を操作する男にコンタクトを試みました。
それぞれに努力と失敗を繰り返す彼らがついにたどり着いた決着方法がちょっと面白かったです。
また、俳優陣の演技がコミカルで、逆境の中でも笑ってしまうシーンがあったのも良かったです。
観終わった時、こんなに大変な状況でも彼らはきっとたくましく生き抜くのだろうなと感じた1本です。
監督:ブノワ・ドゥレピーヌ ギュスタヴ・ケルヴェン 出演:ブランシュ・ギャルダン ドゥニ・ポダリデス コリンヌ・マジエロ ヴァンサン・ラコスト
2020年 フランス/ベルギー 原題:Delete History/Effacer l'historique
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