一瞬で映画に引き込まれてしまいました。

昭和40年ごろの新宿。
高校生のみすず(宮崎あおい)は場違いな制服のまま、街を彷徨っていた。
手にはジャズ喫茶のマッチを握り締めて…
ようやく目的の店を見つけたが中に入れずに佇んでいると、常連客のユカが一緒に入ってくれた。
彼女についていくまま、若者たちのたむろする一画へ現れたみすずに対し
仲間たちと離れて読書をしていた岸(小出恵介)が「子供が何の用だ」という冷たく問いかけた。
その声に思わず踵を返すみすずだったが
彼女の「大人になんてなりたくない」と悲鳴のような声に手を差し伸べたのも岸だった…

周りのすべてを否定するようなオーラを身にまとって登場する宮崎あおいさんは鮮烈でした。
ただ哀しいとか淋しいとか、そんな一言では言い表せないような暗い光を持つ瞳と表情。
そして、その存在感に引き付けられました。
気だるそうに時を過ごす若者たち。
大人になりきれなくて人生の選択の前で立ち止まっている彼らの中で、
大人になることをきっぱりと拒否している彼女の姿は、独特の輝きを持っていました。

どのシーンも表情が印象的でした。
「大人になんかなりたくない」と言い切るシーン。
オートバイにそっと触れて嬉しそうにするシーン。
頭に手を置かれて、不安な表情が徐々に笑顔へと解けていくシーン。
ひとつひとつの心が伝わってきました。

初恋。ただひとつの恋。
それは痛みを伴う想い出になってしまったかも知れないけど、だからこそ一生の想いになる…

三億円事件よりももっと緊張感のある切ない恋をみせられた1本です。


(060610)