ようやく映画祭で観た映画を全部描き終わります。
クロージングに観た『シルク』は美しい映像と音楽が心に静けさを届けてくれるような作品でした。

まだスエズ運河が開通していない19世紀の中頃。
ヨーロッパでは蚕の疫病が流行していた。
フランスの山間にあるシルクの生産の村にとっては、その疫病は死活問題だった。
軍を退役して村に戻ってきた若者エルヴェ(マイケル・ピット)は
愛する妻エレーヌ(キーラ・ナイトレイ)と幸せに暮らしていたが
村の有力者から依頼されて、病気の無い蚕の卵を仕入れる旅に出る。
アフリカへの旅はそれほどの危険は無かったのだが、
持って帰ってきた蚕の卵はやはり疫病に罹っている様子だった。
エルヴェは再び卵の仕入の旅を依頼される。
今度の目的地はアジアを横切って船旅の果てにたどり着く、遠い東国・日本だった…

ひとつひとつが美しい絵のようなシーンと坂本龍一氏の音楽で綴られていて
詩の朗読を映像で観せられているような作品でした。
語られているのはエルヴェの愛、そしてエレーヌの愛です。

エルヴェは幕末の日本にたどり着き、原十兵衛(役所広司)の協力により卵を手に入れることに成功します。
しかし、エルヴェは原の家で出会った少女(芦名星)に心を惹かれます。
結局、話すことも無く、彼女からの付け文一つだけを握り締めて帰国した彼は
翌年も再び何ヶ月もかけて日本を目指します。それは、蚕の卵のためなのか、少女に会うためなのか…
説明を避けるようにそれぞれの心を秘めたまま、エルヴェとエレーヌの愛も彷徨い始めます。

主人公たちが寡黙なせいもあって、観ている方もなんとなくそこにある愛を感じるだけです。
エルヴェが日本の少女に何故惹かれたかは、正直あまり解らなかったです。
でも、彼が妻を大切にしようとする気持ちは伝わって来たので余計に、
なんでこんなに可愛い奥さんを置いて旅に出ようとするのだろうなあと思ってしまいました(^^ゞ
またそれだけに、エレーヌの秘められた愛が明かされた時には心を打たれました。

静かなままにエンドロールが始まって、美しい夢を観たような心地になった1本です。

監督:フランソワ・ジラール 出演:マイケル・ピット キーラ・ナイトレイ 役所広司 芦名星 中谷美紀
2007年製作 日本/カナダ/イタリア 原題:SILK
(071028)