伊坂幸太郎さんの『死神の精度』を映画化したファンタジーです。
観終わった後にじんわりと優しさが胸に来るような作品でした。

雨の教会でお葬式が行なわれていた。
遅れて一人の男が犬と共に教会に入ってきた。
彼は離れた席へ座る。そこにはぽつんと一人の女の子が座っていた。
女の子が花を差し出すが、その花は彼が手を触れるとたちまち枯れてしまった。
彼は苦笑いをすると女の子を連れて歩き始めた。
振り返ると遺影の写真はその女の子だった…

伊坂幸太郎さんの作品はいくつか読んでいますが
いつも面白さと不気味さが同居しているような不思議な印象を受けます。
純粋な悪というか、善悪を考えることを超越した人(もの)が登場してくるのです。

今回は“死神”です。
映画を観ていた時は、優しそうな金城武さんの印象に忘れがちになったのですけど
実は人の死を、感情を交えずに仕事として見つめているような存在です。

この物語の死神は不慮の死を迎えようとしている人の前に現れて、7日間その人を観察した後に
その人の不慮の死を“可”にするか“不可”にするかを判断します。(そして大抵の場合は“可”です。)
何故お葬式で死を悼んで泣くのかを理解できずに、子どもの死についても“可”にしてしまう死神・千葉。
害のなさそうな顔をして静かに人生の最後を見つめている千葉は、実はかなり厄介な存在だったのです。

映画では原作をアレンジして、3話のオムニバスから一人の女性の人生を浮かび上がらせています。
死神の目から見た彼女の人生はよく考えるととても哀しいのに
でも、爽やかな余韻を感じさせてくれる作品に仕上がっていました。

そんな死神たちが夢中になって愛しているものは“音楽”というのは、ちょっと可笑しかったです(^^)
死神たちが音楽を楽しそうに聴いている姿に、音楽っていいものよね~とにっこりした1本です。



監督:筧昌也 出演:金城武 小西真奈美 富司純子 光石研 石田卓也
2007年 日本
(080404)