ジョン・クラカワー著のベストセラー小説『荒野へ』を原作に、
アラスカの大地で非業の死を遂げた若者クリス・マッカンドレスの半生を描いた作品です。
ショーン・ペンが監督として創り上げたかったものはこれだったのか…と納得でした。

大学を優秀な成績で卒業したクリス(エミール・ハーシュ)は、誰にも行き先を告げずに旅立った。
もともと彼は、大学卒業までは義務として両親の期待に応えるように過ごして来た。
だが、彼は昔から夫婦仲の悪い両親のことが本当に嫌いだった。
家族の中で唯一、心を許せるのは妹だけで、幼い頃から両親の暴力的な喧嘩に怯えながら
二人で慰め合っていた。
そんな両親への不信を胸に秘めながら育ったクリスは満を持して行動を起こし、
IDカードを全て捨て、車も途中で乗り捨てて、家族から完全に行方不明になったのだ。
大自然を感じながら進んでいく旅の中で、彼は人々の温かい心に触れる機会を得ながら
少しずつ心を癒していった。
そして、旅の集大成として、彼はアラスカの大地へと向かって行った…

映像の美しさと主人公の運命に、哀しみで胸がいっぱいになってしまいました(T_T)

家族や社会から解き放たれようと当ても無い旅に出た主人公クリス。
彼は高圧的だった父親の残像から逃れるように旅を続けていきます。
一人旅を続ける彼と親しくなった人々はみんな、彼を兄弟や子供のように可愛がって愛します。
彼の孤独さと愛情の飢えを癒そうと心を開いて語りかけるのです。
そんな無償の愛を受けながらも、家族への不信はなかなか消えることはありません。
そして、彼は自分を追い込むようにアラスカへと向かいます。
でも、そこには自然の本当の厳しさが待っていました。

主人公のクリスを演じているのは『スピードレーサー』のエミール・ハーシュ。
『スピードレーサー』では、あの派手な映像に飲まれていたようにも感じたのですけれど
今作では、誰からも愛されるようなクリスを魅力的に演じていました。
また、両親を演じているウィリアム・ハートとマーシャ・ゲイ・ハーデンはさすがの存在感でしたし、
アカデミー賞にノミネートされたハル・ホルブルック演じる孤独な老人との別れのシーンは
本当に切なかったです(T_T)

彼のたどって来た旅と言葉のひとつひとつがとても印象的で胸に響いてきました。
すぐにもう一度観る気にはなれないですけど、またいつか観直してみたいなあと思った1本です。



監督:ショーン・ペン 出演:エミール・ハーシュ ハル・ホルブルック キャサリン・キーナー ウィリアム・ハート マーシャ・ゲイ・ハーデン
2007年 アメリカ 原題:INTO THE WILD
(080818)

追伸
この映画は試写会で観ました。公開は9月6日以降の予定です。