目が見えず三味線と唄を聴かせながら孤独な旅を続ける女剣術使いを描いた時代劇です。
主人公の心の痛みと静かな叫びに胸が打たれるような作品でした。

目の見えない“市”(綾瀬はるか)は三味線と唄を聴かせながら一人旅を続けていた。
ある日、境内で休んでいたところ、彼女の美しさに目を付けた男たちが彼女に手を出そうとした。
「私に構わないで下さい」と静かに言う彼女を笑いながら男たちが囲んだ時、一人の侍が止めに入った。
侍(大沢たかお)は事態を丸く治めようとするが男たちは弱腰の侍を甘く見て襲いかかってきた。
すると、それまで人形のように座っていた市が侍を庇うように男たちに切りかかっていた…

綾瀬はるかさん演じる市の静かな気迫が画面全体から伝わってきました~

芸で身を立てるため幼い頃から仲間と一緒に三味線と唄を学んできた市。
彼女は一人前になって仲間たちと共に仕事をしていましたが
不幸な事件により掟を破ったとして、仲間から追放されてしまいます。
生きる希望も無くなった彼女は、幼い頃から父のように慕っていた人を探したいと願います。
その人ともう一度会うことだけが彼女の生きる希望だったのです。
でも男たちに剣を使ったことにより、彼女は否応無しに戦いに巻き込まれていきました。

それにしても綾瀬はるかさんは予想以上に良かったです。
ガラス玉のように何も映していないように見える瞳。
全ての気力を失ったような静かな表情。
血を流しながらも戦い続ける姿。
全てが主人公そのもので、こんなに演技の上手い人だったとは…と感心してしまいました。
この作品は彼女がいたからこその企画だったのですね。

心が空洞になるほどの喪失感を体験した市の哀しみを感じつつも、
1つの道を終えて新たな道へと旅立っていく彼女の表情に小さな希望が見えた気持ちになった1本です。



監督:曽利文彦 出演:綾瀬はるか 大沢たかお 中村獅童 窪塚洋介
2008年 日本
(20081014)

追伸
この映画は試写会で観ました。公開は10月25日以降の予定です。