瀬尾まいこさんの同名小説を映画化した作品です。
観終わった時、主人公たちと一緒に癒された気持ちになりました。

小さな駅に降り立った千鶴(加藤ローサ)は、運転手に「北の方へ」と告げてタクシーへ乗り込んだ。
夜になっての都会からの一人旅で、しかも只ならない雰囲気を感じた運転手だが
とりあえず山間にある寂れた民宿へと彼女を連れてくる。
その民宿には他に泊り客も居らず、民宿の主人・田村(徳井義実)はお客を迎える様子ではない。
でも、彼女が泊まりたいと言うと、どこの部屋でも選んでと言って彼女を迎え入れた。
そして、荷物を置いて布団の用意も出来た彼女は、睡眠薬を大量に飲んで眠りについた…

私もこんなに静かな時を過ごしてみたいなあと羨ましくなってしまいました(^^ゞ

自殺を図った主人公・千鶴は、結局32時間後に普通に目覚めます。
そして、目覚めた彼女は美味しそうに田村の作った朝ごはんを食べ始めます。
よく眠ったこと。朝ごはんが美味しかったこと。そして、自分にストレスを与える仕事から解放されたこと。
そんな田舎の静かな日々を送るうちに、彼女は癒されていきます。

脚本・監督を手がけたのは「夜のピクニック」の長澤雅彦監督です。
あの作品は劇場成績はいまいちでしたが、私はかなりお気に入りの作品です。
どちらかというと説明的な部分が少ない分、想像力を活躍させなくてはならないところもありますけど、
煩いよりも好きです。この監督さんのテンポや間合いが合うのかも知れません(^^ゞ

あまり悩んでいるようには見えない千鶴も、彼女なりに自殺したくなるほどの悩みがあります。
人には他人の心の基準など本当に分かりませんからね。
例え笑っていても心の底に悩みを抱えていることもあるし、
毎日を楽しんでいるように見えても実は人生の寂しさを感じている…
人の生活や人生なんて一筋縄では行かないものだということを
彼女や田村そして近所の夫婦の姿を通して、改めて伝えてくれました。

それにしても、主人公を演じた加藤ローサさんは本当に美味しそうにご飯を食べていました~
これだけ美味しそうに食べていたら、作った方も作り甲斐があったというものです(^^ゞ
一人で暮らしてきた田村が彼女に表すのはぶっきらぼうな優しさです。
でも、きっと彼もこんな彼女の存在を嬉しく思っているのだろうなあと感じながら観ていました。

自分の役割と居場所を探す決心をした彼女にしなやかな強さを感じて、ちょっと嬉しくなった1本です。



監督:長澤雅彦 出演:加藤ローサ 徳井義実
2008年 日本
(20081201)