いつもの通り中学校で授業を受けていた沙織(志田未来)のもとに衝撃的な知らせが届いた。
18歳の兄が小学生姉妹殺人事件の容疑者になってしまったのだ。
彼女が家に着くと、家の中は刑事で溢れ帰り、家の周りにはマスコミと野次馬が集まっていた。
もはや彼女の知る平和な日常はどこにもなかった。
兄の事実を認識できずに呆然としたままの沙織の前で、次々と事態は動いていく。
家宅捜索。兄の逮捕。苗字を変更するための法的手続き。
学校にも通えなくなるので義務教育を免除する手続き用にも書類が揃えられていた。
そして、そんな彼女を保護する役目を負った刑事・勝浦(佐藤浩市)は
家に居たいと言う彼女を急き立てるように車に乗せ、新宿のホテルへと向かう。
だが、彼女たちの車には何台ものマスコミの車が追いかけてきた…
“家族を守る”という言葉に様々な想いを感じました。
妻と娘とは別居中で離婚の危機にある刑事。
彼は3年前に起きた殺人事件を未然に防げなかったことが深い心の傷となって残っています。
彼は守ることに自信が持てません。
そして、兄が殺人事件を起こしたために家族がバラバラになってしまった少女。
彼女は犯人の妹として、これまでの世界の全てを失ってしまいます。
彼女は何から守られなくてはならないかも分かっていません。
二人はマスコミの取材攻勢と共に、理不尽なネットの攻撃を受け始めます。
必死に逃げてもネットの世界は隅々まで広がり、どこまでも追いかけてきます。
しかも、匿名性という無責任さで、罪の意識のかけらもありません。
そんな二人が逃げ込んだのは、過去に起きた事件の犠牲者の家族のもとでした。
登場人物たちに共通するのは“守れなかった”という過去です。
そのために大切な家族を失っています。
その悲しみは一生忘れられないものです。
加害者の家族でも被害者の家族でも、家族を失ったという悲しみは大きく辛いものです。
主人公たちはそんな事実に少しずつ気付いていきます。
それにしても佐藤浩市さんと志田未来さんの演技は良かったです。
リアルな雰囲気を出している映像と共に、その演技に引き込まれました。
そして、それぞれが抱えた痛みが真っ直ぐに伝わってきました。
観終わった時、守ることが生きることに繋がるのだと改めて感じた1本です。
監督:君塚良一 出演:佐藤浩市 志田未来 柳葉敏郎 石田ゆり子 松田龍平 佐々木蔵之介
(20090304)