明治40年。陸軍の中では日本地図の完成を望む声が高まっていた。
地図を作るにはその場所へ行って三角点を設置し、測量をしなければならない。
地図の最後の空白地帯になっている富山県の劔岳は地元の人々が死の山と恐れるほどの山だ。
数年前にも測量隊が挑戦し近くの山には登頂できたが、劔岳にはたどり着くことが出来なかった。
だが、今年は状況が違っていた。
民間人によって設立された日本山岳会が富山県劔岳の登頂に挑戦しようとしていたのだ。
軍の威信にかけても、初登頂の名誉を民間人に渡してはならないと考えた上層部は
測量手の中でも優秀な柴崎芳太郎(浅野忠信)にその任を託した。
命を受けた柴崎が下見に向かったが、地元の案内人・宇治長次郎(香川照之)と共に歩き回っても
登頂への道は全く見つからなかった…
久々にCGではない本物の映像の凄さを感じた気がしました。
厳しい山の自然をそのまま映し出した映像に圧倒されました~
地図は紙の上で見ている者を世界のどこへでも連れて行ってくれる素晴らしいものです。
でも、実は地図をどのように作っているかはほとんど知りませんでした。
三角点を置き、測量をし、高度を測る。
その緻密な作業の繰り返しによって地図は出来上がっていきます。
今回、富山の劔岳周辺を測量するには
劔岳以外にも周辺を巡って数十箇所の測量をしなければなりません。
ただ劔岳を登頂するだけではないという事実をため息と共に見つめていました。
軍の威信とかいろいろ脅されて測量に行かされるのは測量手です。
彼らは軍人ではなく民間人です。でも、有無を言わせず行かされてしまいます。
今回、測量手の柴崎も下見の報告で難しいと伝えましたが、
気持ちが足りないと理解の無いことを言われ、上層部に全く聞く耳を持ってもらえませんでした。
そして、彼は数ヶ月に及ぶ苦労の登山を敢行することになりました。
それにしても、こだわりを持つ監督さんが撮り続けた映像は本当に素晴らしかったです。
登山には無縁な私には、きっとこの映画でしか得ることの出来ない体験が出来た気がします。
あの空に広がる美しい夕焼けも、富山の山々の向こうに見える富士山の姿も、
一瞬でホワイトアウトしていく吹雪の中のうしろ姿も、
本物でなければ感じられないような想いを伝えてくれました。
ここまで厳しい自然をそのまま映像にしてくれたからこそ、
主人公たちの苦労もしっかりと観ている者に伝わってきたと思います。
そして、何と言ってもあの雪崩にはびっくりです。
これはみんな本当に雪崩の下敷きになったでしょう!という映像でした。
ラストに出てきた“原作者にささげる”という文字を見て
この映画に携わった全ての人たちの誇りが感じられました。
ここまで頑張ったなら、それも納得だなあとしみじみ思った1本です。
監督:木村大作 出演:浅野忠信 香川照之 松田龍平 モロ師岡 螢雪次朗 仲村トオル 役所広司 宮崎あおい
2009年 日本
(20090706)