突然に移動してきては舞台を披露するパルナサス博士(クリストファー・プラマー)の幻想館。
瞑想しているパルナサス博士のパワーで
鏡に入った人間の欲望を形にした世界へと誘う不思議な出し物だ。
博士には秘密があった。実際の年齢は1000歳。
もともと彼は高僧だったが、悪魔と取引をして永遠の命を手に入れたのだ。
だが、運命の女性に出会った時、彼は永遠の命だけではなく若さも手に入れたいと願った。
若さとその女性を手に入れた彼は幸せの絶頂だったが、その代償は生まれてくる娘の命だった。
そして、大切な愛娘ヴァレンティナ(リリー・コール)は
その期限である16歳の誕生日を3日後に控えていた…
人々の妄想の世界は意外にポップで楽しそうでした~
人間の欲望が巡って展開していくファンタジーです。
悪魔と取引してしまった博士の願いは永遠の命と愛をゲットできる若さ。
そのために自由を失った娘ヴァレンティナの願いは自由と幸せな家庭です。
彼女を愛し、ひたすら彼女を助けようとするアントン(アンドリュー・ガーフィールド)の願いは彼女の愛。
そして、死ぬ運命だったところをヴァレンティナに助けられたトニー(ヒース・レジャー)は
人当たりの良いハンサムな外見の裏に、自分の強欲な顔を隠し持っていました。
人は幸せになりたいと願います。
欲望を超えたところに何が待ち受けているのか、博士の幻想と選択は問いかけてきます。
もともと博士に永遠の命を与えたのは、悪魔がこのゲームを楽しむための道具にしたかったからです。
欲望に落ちずに博士の示す道を行った場合は博士の勝ち、
悪魔の示した甘い欲望に落ちた場合は悪魔の勝ち。
もちろん、悪魔の選択の先に幸せは待っていません。
そして、博士自身も欲望の誘惑にとても弱い性格をしていました。
博士のゲームの商品にされてしまった美しい娘ヴァレンティナは普通の幸せを求める女の子です。
放浪生活の中で父に育てら彼女は、両親と子供が一つ屋根の下に暮らす暖かい家庭を夢見ています。
そんな彼女は突然に現れた頼りがいのあるトニーに恋をします。
自分をこの現実から連れ出してくれる男だと信じたのです。
トニーも彼女の夢に答えるように、甘い言葉で彼女を誘います。
でも、幻想の世界で次第に追い詰められたトニーは、次第にその正体を現しました。
それにしても、俳優たちは素晴らしかったです~
主人公のトニーは優しい笑顔で人を惑わし
機転の良さで自分の望む方向へと相手を導いてしまうパワーを持っています。
ヒース・レジャーの出演作では『ブロークバック・マウンテン』や『ダークナイト』の方が有名ですけど
個人的には『ROCK YOU!』や『カサノバ』の明るいキャラクターの印象が強いです。
今回もこのトニーの笑顔の裏に何かを隠しているような、怪しげなキャラクターがぴったりでした。
また、友情出演した3人も素敵でした。
1日半という時間で強行撮影したジョニー・デップは、出演時間は短いですけど
女性を惑わすシチュエーションには最適です。
自分の欲望の具現化を喜ぶシーンを演じたジュード・ロウの目を見開いた笑顔も
ちょっと怖くて面白かったです。
そして、3人の中では一番長い時間を出演してトリをとったコリン・ファレルは
彼がいたからこそこの作品が完成できたのだろうなあと感じるような演技を見せてくれました。
欲望と幸せの道は違っているのかも知れない。
そしてどんなに小さくても平凡でも、幸せの姿は周りの人にも幸せを与えてくれるかも知れない。
ごちゃごちゃしたポップな幻想を超えたところで待っているのは
本当はそんなささやかな幸せなのだろうなあと
観終わって1日過ぎた頃に頭に浮かんだ1本です(^^ゞ
監督:テリー・ギリアム 出演:ヒース・レジャー クリストファー・プラマー リリー・コール アンドリュー・ガーフィールド トム・ウェイツ ヴァーン・トロイヤー ジョニー・デップ ジュード・ロウ コリン・ファレル
2009年 イギリス/カナダ 原題:THE IMAGINARIUM OF DOCTOR PARNASSUS
(20100127)