取り立て屋のチンピラ、サンフン(ヤン・イクチュン)はとても暴力的で手に負えない男だ。
街で女性を殴る男を見かけると、その行為に怒りを覚えて男をボコボコに殴り倒すが、
殴られていた女性にも怒りを覚えて、手を上げてしまうような性格だった。
ある日、道を歩きながら唾を吐くと、たまたま通りかかった女子高生ヨニ(キム・コッピ)にかかってしまう。
怒ったヨニが何とかしろと詰め寄ると、無造作に拭こうとするが場所がブラウスの胸だったので
ヨニが再びどこに触っているのと怒ってサンフンの頬を叩いた。
するとサンフンは無表情のままヨニを殴り倒し、彼女を気絶させてしまう。
しばらくして目を覚ましたヨニの傍には、やはり無表情でサンフンが座り込んでいた…
人を殴るという行為の痛さと怖さに最後までショックを受けました(T_T)
取り立て屋のチンピラ、サンフンを主人公に描いた物語です。
サンフンは殴ることでしか気持ちを伝えられないような人です。
そして、誰でも殴ります。
彼の唯一の理解者マンシク(チョン・マンシク)も彼の先輩で雇い主なのに、やっぱり殴ります。
そんなサンフンをマンシクは手が負えないと思いつつも面倒を見続けます。
それはサンフンが幼い頃に父親の暴力により母と妹を失い、
今でも父親への憎しみで心がいっぱいになっていることを知っているからでした。
そんなサンフンがとても気の強い女子高生ヨニと出会います。
彼女も戦争の後遺症により精神を病んでしまった父の暴力と、不良の弟に悩まされています。
でも、彼女はそんな悩みを誰にも打ち明けることはありません。
気丈な強さで痛みや苦しみを覆い隠しています。
そして、そんな怖いもの知らずな態度をとるヨニにサンフンは親しみを持つようになっていきました。
この出会いや幼い甥との交流によってサンフンの心は少しずつ変わっていきます。
次第に暴力で相手を痛めつけることに抵抗を感じるようになってくるのです。
でも、過去の暴力の跡はそう簡単には消えるものではありません。
暴力は受けた者の心を変えてしまうのです。
そして、悲劇は起きてしまいました。
それにしても、ハードな物語でした(T_T)
サンフンが殴るシーンから始まり、サンフンとは別の人物が殴っている姿で終わります。
それは暴力は連鎖していくという象徴であり、暴力によって人は壊されていく…という
諦めにも似た哀しさを伝えていました。
そして、暴力にさらされた人間はどのように生きればよいのだろうかという問いかけのようにも感じました。
サンフンと心を通い合わせる女子高生ヨニに一番共感しながら見ていた私には
この物語のラストはとてもショックでした(T_T)
凄い作品だなあと思うのと同時に、あまりのショックにしばらく立ち直れない気持ちになった1本です。
監督:ヤン・イクチュン 出演:ヤン・イクチュン キム・コッピ チョン・マンシク イ・ファン パク・チョンスン チェ・ヨンミン ユン・スンフン
2008年 韓国 原題:BREATHLESS
(20100420)
→
公式サイトはこちらへ