刑務所から出所した(ターシー・スー)は、メモ書きの住所をもとに港町までたどり着いた。
刑務所で一緒だった姉貴分のアン(ルー・イーチン)を頼りにやって来たのだ。
クラブの経営をしているアンは、久々に会うアユーをむかい入れる。
アンにまだ薬を飲んでいるのかと聞かれたアユーは、止めたら危険だと医者から言われたと答えた。
アンはアユーが心の病を持っていることや、人に接するのが苦手なことを理解している唯一の人で
刑務所の中にいた時から目をかけてくれていた。
仕事が必要なアユーに、アンは綺麗な服を与えると自分の店で働かせる。
接客ではなくカウンターでグラスを洗う仕事だったが、彼女に目を留めた金持ちの客チェンは
彼女に一か月分程の稼ぎと同等の金を支払う条件で彼女を連れ出した。
アユーの不思議な態度に違和感を持ちつつも一晩を共にしたチェンは、
翌朝、また会おうと優しく言葉をかけてホテルの部屋から去った。
だが、アユーが何日待っていても、男から連絡が来ることは無かった…
恋をしても自ら壊してしまうようなアユーの姿がとても痛々しかったです(T_T)
アユーは儚げな雰囲気を持っている大人しくて優しそうな女性です。
そんな彼女は心の病を持っています。
彼女曰く、スイッチが切れないそうです。
特に、男から優しい言葉をかけられるとすぐに絆されて恋に落ちてしまい、
その想いに囚われて身動きが取れなくなってしまいます。
恋に落ちた彼女はいつも相手の傍にいたいと願います。
連絡をくれないチェンには電話を何度もかけて相手を怒らした上に、
店に来ても彼女に見向きもしない彼にとうとう怒りをぶつけてしまいます。
また、その後に出会ったハンサムで優しいシャオハオ(リー・ウェイ)とは同棲するまでになりますけど、
彼も彼女の存在が次第に疎ましくなってしまいます。
恋に偏執的になってしまう彼女を受け入れてくれる男はいないのです。
でも、そんな彼女はアンに救われます。
例え一晩で大金を手にした彼女を羨んでも、男と暮らすために出て行く彼女に怒りを覚えたことがあっても
姉御肌のアンはどうしてもアユーを見捨てることは出来ません。
自分でも男のために刑務所暮らしになったという経験を持つアンは
男のために哀しみを背負うアユーを突き放すことが出来なかったのです。
そんなアユーも最後に頼りにするのはやっぱりアンでした。
それにしても、不思議な雰囲気の作品でした~
極端に台詞が少なくて、時には映像だけで物語が綴られていきます。
その映像の中でも、儚げで陰のあるアユーを演じたターシー・スーの佇まいが印象的で
ルー・イーチンさんの演じたアンの不器用な優しさと共に心に残りました。
ただ、映像が美しくて印象的な反面、こういう作品が苦手な人は寝るかもと思ってしまいました(^^ゞ
ラストに登場した伝統芸能人形劇の巧みな動きに、主人公と同じように楽しんでしまいました。
何かを訴えるように海へ向かって叫ぶアユーの姿を観ながら、
ちょっとだけほっとした気持ちになった1本です。
監督:チェン・ウェンタン 出演:ターシー・スー ルー・イーチン リー・ウェイ レオン・ダイ
2005年 台湾