フランスのストラスブールを舞台に愛を求めて彷徨う青年の姿を追った作品です。
耳をすませたくなるような映画と聞いていたので、どんな内容なのだろうと気になっていました。
主人公が街を見つめている視線がそのまま映し出されたような映像に、
まるで自分もストラスブールの街を彷徨っているような感覚になる作品でした。
一人の青年(グザヴィエ・ラフィット)がオープンカフェで楽しそうにおしゃべりしている女性たちを眺めていた。
彼はその女性たちをスケッチしながら、時々それぞれの表情を注意深く見つめている。
実は彼は6年前にこの街で出会った女性を捜し求めていたのだ。
だが、ほとんど手がかりは無かった。
長いこと女性たちをスケッチしていた彼は、席を変えてカフェの中の女性たちを見始めた。
すると、表情が変わった、
彼の想っていた女性(ピラール・ロペス・デ・アジャラ)をガラス越しに見つけたのだ。
その女性がカフェを出て歩き始めた時、彼は席をたって女性を追い始めた…
街が主役のようでした。
ほとんど台詞の無い作品です。
その代わり、街の音が耳に広がります。
がやがや聞こえるおしゃべりの音。楽しそうな笑い声。
ハイヒールの靴音。行き交う車の音や路面電車の音。
まるで街が何かを語りかけてくるような音の合唱に、心地よく耳を傾けてしまいます。
ちょっと疲れている時に観ると、そのまま夢の中に入ってしまうかも知れません(^^ゞ
映画全体も、何となく街の見ている夢の中を彷徨っているようにも感じます。
そんな街の中で、彼は一人の女性を見つけます。
彼が追いかけているのに女性は振り返ることなく早足で歩いていきます。
鳴り響く靴音と共に、街は迷路になっていきます。
主人公の心情と共に姿を変えるようなその街の雰囲気はとても楽しかったです。
それにしても不思議な作品でした。
一人の女性の愛を追い求める青年の姿をリアルな街の姿と共に描いているのですけど、
青年の姿や彼の見つめる視線の先を映し出していると、いつの間にか観ている方も
街に触れている気がしてきました。
あと、何と言っても青年を演じたグザヴィエ・ラフィットや
スクリーンに映し出される女性たちがみんな美しくて、笑顔を観ているだけでも心地よかったです。
観終った時、まるで夢から覚めたような気分になりました。
こんなふうにどこかの街を彷徨ってみるのも面白かなあとちょっと想った1本です。
監督:ホセ・ルイス・ゲリン 出演:グザヴィエ・ラフィット ピラール・ロペス・デ・アジャラ
2007年 スペイン/フランス 原題:EN LA CIUDAD DE SYLVIA/DANS LA VILLE DE SYLVIA/IN THE CITY OF SYLVIA
(20100903)
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