トルストイ(クリストファー・プラマー)の始めた運動を支える弟子チェルトコフ(ポール・ジアマッティ)の元に
彼らの運動に感銘を受けたワレンチン(ジェームズ・マカヴォイ)がやって来た。
チェルトコフは彼の純粋さと熱心さを見込んで、彼をトルストイの秘書に抜擢し
毎日、屋敷で起こった言動を細かく日記に残すように指示した。
軟禁状態である自分の目の変わりにしようとしたのだ。
トルストイに面会したワレンチンは、偉大な偶像の裏にあるトルストイの大らかさと愛情の深さに感激する。
そして、チェルトコフが敵視していた妻ソフィヤ(ヘレン・ミレン)との愛情の深さも微笑ましく思っていた。
だが、トルストイとソフィヤの仲にはチェルトコフが主張している著作権の問題で溝が生まれていた…
悪女と言われてきたソフィヤの愛情豊かな姿が心に残りました~
妻として愛情深く13人の子供を生み、仕事のパートナーとしてもトルストイの著作物の清書をこなして来たソフィヤ。
彼女は悪女と言われているのですけど、この作品を観ている限りそんなふうには思えません。
例え、感情的になって騒ぎを起こすことがあっても、それは生涯のパートナーとしての自負を持っていた彼女が
運動によって蔑ろにされた寂しさの裏返しのように思えてきます。
むしろ運動を進め、トルストイの一番弟子として親友のように付き添っていたチェルトコフの方が
策略家でソフィヤの敵のようにみえて来るのが面白かったです。
それは純粋な若者ワレンチンの公平な視点から見ているためかも知れません。
彼は本当の恋を知らずに生きてきました。
若い頃に放埓な生活を送っていたトルストイとは対照的な存在です。
ワレンチンは聞かされていた偶像よりもずっと人間的なトルストイの姿に戸惑いを感じつつも
次第に偶像と現実の彼の違いに気付いていきます。
それは高潔な運動とソフィヤと育んで来た愛との隔たりでもありました。
そして、ワレンチンが本当の恋に出会った時、人間に一番大切なものは何かを悟りました。
それにしても、やっぱり役者がいいですね~
ヘレン・ミレンやクリストファー・プラマーの存在感はもちろんのこと、
ポール・ジアマッティのちょっと策士的な雰囲気もぴったりでした。
そして、純粋な青年ワレンチンを演じたジェームズ・マカヴォイのいい人ぶりは最高ですね。
さすがはタムナスさんが似合うだけはあります。
現状や自分の心の揺れに悩みながらも最期には愛を信じるようになるワレンチンの視線を
見ている者に素直に感じさせるものがありました。
観終った時、運動にとっては悪女でも、トルストイにとってのソフィヤはやっぱり最愛の人だったのだなあと感じた1本です。
監督:マイケル・ホフマン 出演:ヘレン・ミレン クリストファー・プラマー ジェームズ・マカヴォイ ポール・ジアマッティ アンヌ=マリー・ダフ
2009年 ドイツ/ロシア 原題:THE LAST STATION
(20101014)
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