1942年7月、パリ。アパートに住んでいたサラの家にフランスの警察官がやってきた。
不穏な気配を感じたサラ(メリュシーヌ・マイヤンス)は弟を助けようと思いつき、
部屋の押入れに弟を入れて、私が呼ぶまで出て来てはダメと言って鍵をかけた。
だが、警察はサラの母にすぐに荷物をまとめろと命令すると、サラ共々家から連れ去ってしまう。
行き先は屋内競技場で、トイレも水も与えられない状態のまま厳しい警護のもとに置かれてしまった。
弟が心配なサラはどうしても家に帰りたいと主張するも願いは叶わず、そのまま収容所へ連れて行かれる。
そして、数ヶ月が過ぎてしまった…
これが実際に起こったことなのだな…と切なくなりました(T_T)
1942年にパリで起きたヴェル・ディヴ事件をテーマに描いた作品です。
アメリカ人ジャーナリストのジュリア(クリスティン・スコット・トーマス)はフランス人と暮らしていて、
現在はパリに在中です。
彼女は恋人の祖父母が暮らしていたという古いアパートを見せられ、
ここを娘と3人で暮らすために改装しようと提案されます。
その改装が始まった頃、たまたま1942年のユダヤ人迫害事件を取材中に、その祖父母のアパートが
実は収容所送りになったユダヤ人一家が住んでいた家だと判ります。
ジャーナリストの精神を刺激された彼女は、そのユダヤ人一家の行方を捜し始めました。
物語は現在と過去を行き来しつつ展開されていきます。
サラの物語とジュリアの物語。
サラは父母と離れ離れになり、それでも弟のいる家へ帰ろうと必死に頑張ります。
彼女の強い意志が人々の心を揺り動かし、やがて収容所を脱走して家へと近付いて行きました。
ジュリアはそんなサラの足跡を、いろいろな人の話を聞きながら追っていきます。
フランスからアメリカへ、そしてイタリアへ。
悲劇から孤独と絶望を味わったサラの行く末には胸が衝かれました。
それは同じパリという街でありながら、あまりにもかけ離れた人生でした。
それにしても、切ない物語でした。
特にサラの少女時代を演じたメリュシーヌ・マイヤンスちゃんの演技の上手さは圧倒的で、
彼女の全てを受け止めているような深い瞳に引き込まれました。
そして現在を生きるジュリアを演じたクリスティン・スコット・トーマスの
真っ直ぐに真実を追っていこうとする姿に
いつの時代にも変わらない女性の逞しさと愛情の深さを感じました。
観始めた時は重いテーマなので耐えられるかなとか重いながら観ていたのですけど、
過去と現在を交互に映し出しているので、予想よりも観やすかったです。
帰り道、家路へ向かう道を歩きながら、サラのことが頭から離れなかった1本です。
監督:ジル・パケ=ブレネール 出演:クリスティン・スコット・トーマス メリュシーヌ・マイヤンス ニエル・アレストラップ エイダン・クイン
2010年 フランス 原題:Sarah's Key /ELLE S'APPELAIT SARAH
(20101029)
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公式サイトはこちらへ http://www.sara.gaga.ne.jp/追伸
この映画は東京国際映画祭で観ました。公開は2011年12月頃の予定です。