ベンハミン(リカルド・ダリン)は家で小説の出だしを書き出そうとしていた。
長年勤めてきた裁判所を定年退職した彼は、
25年前に自分の人生を変えた殺人事件をもとに小説を書こうとしていたのだ。
だが、何度、出だしを書いても数行で止まってしまう。
思い悩んだベンハミンは当時の上司で今では検事となっているイレーネ(ソレダ・ビジャミル)を訪ねた。
彼女は大卒の才女で、年下ながら判事補として赴任した時から、高卒の書記官ベンハミンの上司だった。
イレーネは久しぶりに会ったベンハミンを笑顔で迎えた。
そして、彼が小説を書き始めたことを聞くと、差し出したノートを読み始めた…
ひとつの事件の行方は正義と愛と信念のもとに動いていきました。
1974年に起きた殺人事件を辿る中で明らかになる事実と愛の形を描いた作品です。
この年のアルゼンチンは大統領が任期中に病死し、
2年後にクーデターで軍事政権が起きているように政治的に不安定な時期でした。
ベンハミンの直属の上司は新任の判事補イレーネで、その上には正義よりも政治を大切にするような
どうしようもない判事がボスとして君臨していました。
ベンハミンは書記官として殺人事件の現場に行きます。
当時としては、書記官も裁判所の者として現場に赴いたそうです。
そこで彼は結婚して1年で殺されてしまった23歳の美しい女性リリアナの無残な遺体を見てしまいます。
写真立てに入った輝くような笑顔と現状の差にショックを受けた彼は、その事件にのめり込みました。
捜査の失敗や判事の横槍から一時は棚上げになった捜査でしたが、
偶然、ベンハミンが被害者の夫リカルド(パブロ・ラゴ)と駅で再会したことから再調査が始まります。
当時から容疑者はイシドロ・ゴメス(ハビエル・ゴディーノ)だという目星はついていました。
ベンハミンがゴメスの行方を必死に考えていたところ、
部下であり親友でもあるパブロ(ギレルモ・フランセーヤ)がヒントを見つけようやくゴメスを逮捕することが出来ます。
ゴメスが裁判にかけられ終身刑となったことで、夫リカルドにもようやく心の区切りがつくはずでした。
でも、しばらくしてテレビを見ると、そこにはスーツに身を包んだゴメスが堂々と写っていました。
それにしても、目の離せない物語でした。
事件の真相を追っていく展開ですけど、その奥には強い愛の姿が浮かび上がってきます。
ベンハミンが25年の年月を経て再開した夫リカルドに愛の喪失をどうやって耐えたのかと問いかけた時、事件の結果を悟ります。
その真相にはかなり衝撃を受けてしまいました(T_T)
事件をきっかけに失った愛の深さ。そして犯人に向けられた正義の行方が分かった時、
ベンハミンは自分の心と真っ直ぐに向き合おうとします。
笑顔の浮かぶラストを観ながら、この主人公に幸せな未来が訪れますようにと願った1本です。
監督:フアン・ホセ・カンパネラ 出演:リカルド・ダリン ソレダ・ビジャミル パブロ・ラゴ ハビエル・ゴディーノ ギレルモ・フランセーヤ カルラ・ケベド
2009年 アルゼンチン 原題:EL SECRETO DE SUS OJOS/THE SECRET IN THEIR EYES
→公式サイトはこちらへ http://www.hitomi-himitsu.jp/