イギリス人作家のジェームズ(ウィリアム・シメル)は新刊を携えて、トスカーナにやって来た。
彼のサイン会&講演会場にはフランス人女性(ジュリエット・ビノシュ)の姿があった。
彼女はジェームズのファンで、自分や家族用に6冊の本にサインをしてもらおうと思っていたのだ。
だが、まだ小学生の息子は本の講演など聞いていても面白くない。
彼女が呼んでも会場の脇でゲームをしながらお腹がすいたと、彼女を睨みつけているだけだった。
仕方なくジェームズの友人に自分の電話番号を渡して伝言を頼むと、彼女は息子と会場を出た。
そして、自宅のギャラリーで待っていた彼女の元にジェームズが訪ねて来た…
本気で夫婦のように喧嘩している二人の会話が面白かったです~
トスカーナでの男女の1日を描いた作品です。
男性はイギリスから講演に来た作家。
女性はフランス人で、ひとり息子とトスカーナに5年間住みながらギャラリーを経営しています。
二人は作家とファンの一人という立場で出会います。
女性が作家に興味を持ったのは、その著書の贋作についての考え方についてですけど、
作家自身にも惹かれているようです。
何と言っても頭もスタイルもスマートで素敵な作家なのです。
その華やいだ気持ちはすぐに息子にも気付かれます。
小学生の息子が大人びた様子で母親と交わす会話が可笑しくて、
フランス人親子だなあと感じました。
作家はファンである彼女の持った疑問に答えようと思っているようでした。
もしかしたら、地元の人に近くのお勧めスポットを案内して欲しかったのかも知れません。
彼はギャラリーで語らうのではなく、外に出ようと誘い、
二人は彼女の案内でドライブに出かけます。
そして、たまたま入ったカフェの女主人に夫婦と間違えられたことから、
二人は夫婦の真似事を始めました。
それにしても、不思議な物語でした。
最初は作家とファンとして出会うのですけど、遊びで夫婦の会話を始めるとそれがあまりにもリアルで、
一体この二人は本当に夫婦だったのだろうかと思えてきてしまいます。
二人の言葉の中にどれくらいの本心やどれくらいの真実が隠されているのかは分かりません。
そんな二人の会話に、観ている方も惑わされつつも引き込まれました(^^ゞ
画面全体にジュリエット・ビノシュの魅力が溢れていました。
特に彼女の偽夫婦のなりきりようには笑ってしまいます。
作家役のテノール歌手ウィリアム・シメルの戸惑いながらも
彼女のパワーに押されてついていくような様子も良かったです。
そして、何と言ってもトスカーナの雰囲気が素敵でした。
観終わった時、惑わされたなあと思ったと同時に
二人と一緒に不思議な1日を過ごした気分になった1本です。
監督:アッバス・キアロスタミ 出演:ジュリエット・ビノシュ ウィリアム・シメル ジャンナ・ジャンケッティ ジャン=クロード・カリエール ジャンナ・ジャンケッティ アドリアン・モア
2010年 フランス/イタリア 原題:CERTIFIED COPY
(20110304)
→公式サイトはこちらへ http://www.toscana-gansaku.com/