ゲオルギ(オヴァネス・ドゥロシャン)は自分の部屋でぼんやりと窓の外を眺めていた。
部屋を出て行くと、すぐに父のチェックが入る。
本来なら17歳のゲオルギは学校へ行かなくてはなない時間だったのだ。
だが、彼は「今日は午後から」というと、父に有無を言わさず朝食を食べ始めた。
しばらくするとゲオルギは家を出たが、外で待っていたのは不良っぽい友達だ。
友達に連れられて街をだらだらと歩いていたゲオルギは、
午後から学校へ行きたいと言ったりもするが、
そのまま友達の言うなりになって夜まで過ごしてしまう。
そして、引き合わされたのは過激派グループのリーダーだった…
高校生の若者の視線と30代の兄の視線で見るソフィアの街は、彷徨うことしか出来ない場所でした。
居心地の悪い家庭や社会から逃れて過激派グループに居場所を求めた高校生ゲオルギと
芸術の才能を持ちつつも活動する機会が得られずに、小さな木工所で食い扶持を稼ぐ生活をしている
30代の兄イツォ(フリスト・フリストフ)の物語です。
歳は離れていますけど、二人とも自分の才能と所在をどうしていいか分からない感じです。
弟ゲオルギは何となく過激派グループの仲間に入り、命じられるままに人を傷つけます。
兄イツォは外へ向かわない分、ドラッグや酒に溺れて自分の身体を蝕んでいます。
二人はほとんど交流は無く似ていないように見えるのに、やっぱり行動が似ていると感じるのです。
家を出て久しいイツォはトルコ人旅行者に暴力を振るっているグループを見咎めて
逆にそのグループのリーダーに殴られてしまいます。
実はトルコ人を殴っていたのはリーダーに命令されたゲオルギです。
視線を交わした兄弟は無言で離れますけど、翌日、兄は実家に顔を見せます。
兄が家を出たのは父と折り合いが悪いためです。
久々に家に寄ってもやっぱり口げんかになり、兄は怒って家を出てきてしまいます。
そんな兄を追っていった弟は、そこで短いながらも会話を交わします。
兄は過激派グループには関わるなと言って、静かに弟を諌めます。
そして、そのトルコ人の事件をきっかけに、兄も弟も少しずつ変わり始めました。
それにしてもリアルな雰囲気でした。
後で解説を読んでみると、兄のイツォのモデルは演じていたフリスト・フリストフだそうです。
本人が演じたからか、納得させられるような存在感がありました。
そして、彼が感じている閉塞感や疎外感がそのまま伝わって来ました(T_T)
これまで知る機会の無かったブルガリアという国の雰囲気に触れられて興味深かったです。
この雰囲気がプルがリアの全てだとは思っていないのですけど、
あまりにもやるせなくて途中、ため息をついてしまいました。
それでも、観終わった時に未来を感じられるような気がしてほっとした1本です。
監督:カメン・カレフ 出演:フリスト・フリストフ オヴァネス・ドゥロシャン サーデット・ウシュル・アクソイ ニコリナ・ヤンチェヴァ
2009年 ブルガリア 原題:EASTERN PLAYS
(20110327)
→公式サイトはこちらへ http://www.eiganokuni.com/sofia/index2.html