誘拐されてきたらしい少年が少年兵にされるために頭を刈られるシーンから始まる物語です。
憎しみの連鎖はあまりにも重い運命を作り出してしまいました。
母ナワル(ルブナ・アザバルは娘ジャンヌ(メリッサ・デゾルモー=プーラン)とプールに行った時に、
突然に呆けたようになって、そのまま表情を取り戻すことなく亡くなってしまいます。
長年、ナワルは公証人ジャン・ルベル(レミー・ジラール)の秘書をしていました。
ジャンは亡くなった妻ともどもナワルは家族同様と厚い信頼をおいていて、
二人の子供たちのことも大切に思っています。
そんなジャンが公証人として二人に告げた遺言状の内容は、これまで死んだと聞かされていた父と
これまで聞いたことも無い兄を探して手紙を渡せと言うものでした。
そんな母は子供たちにとってかなり変わっていた人のようでした。
双子の弟シモン(マキシム・ゴーデット)は愛情を受けられずに育ったことを辛く思っていて、
母への嫌悪感を隠しません。そんな遺言状など知らないという態度です。
一方の姉ジャンヌは、せめて遺言状に書いてあることは実行してあげたいと行動を起こそうします。
そして、母の荷物を捜して母の過去の手がかりとなる写真を見つけると、
カナダから母の故郷である中東へとひとり向かいました。
でも、母の過去を捜す彼女には、言葉以上に難しい問題と厳しい過去が立ちはだかっていました。
それにしても、凄まじい物語でした。
劇場が明るくなって、現実ではなかったことにほっとするという感じです。
そして最初に思ったのは、母であるナワル自身がショックを受けて弱ってしまうほどの真実を
なぜ子供たちに残すのかという疑問でした。
でも、生まれた時に手放した息子はナワルが人生を変えることになった大切な愛の結晶であり、
生き別れになった息子を探し出すことが、彼女の人生で果たさなくてはならない約束でした。
そして、彼女にとっては行方不明の息子もその後に生まれた双子ジャンヌとシモンも、
みんな愛する子供たちだったのです。
それを改めて悟った時、彼女は自分の人生を本当に愛せたのではないかと感じました。
でも、憎しみを愛で包み込むようなその愛は、ナワルが母だからこその愛なのだろうなと思いました。
そんな気が遠くなるような深い愛を、残された子供たちはどんなふうに受け止めていくのかなと
しばらく考えてしまった1本です。
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ 出演:ルブナ・アザバル メリッサ・デゾルモー=プーラン マキシム・ゴーデット レミー・ジラール
2010年 カナダ/フランス 原題:INCENDIES
(20120117)
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