岩井俊二監督が原作から脚本・監督・音楽・撮影・編集を担当して創り上げたサスペンスです。
この監督の“ヴァンパイア”とは、どんな作品なのだろうかと気になっていました。
独特の暗さと透明感のある映像から始まる物語は、心に不思議な感覚を残していきました。
主人公のサイモンは美しくて優しくて怖い人でした。
ネットのサイトで出会った女性の死から始まる物語です。
雨上がりのある日のこと。若い女性が(ケイシャ・キャッスル=ヒューズ)人気の無い場所に立っていました。
黒い車が女性に近付き、運転席の若い男(ケヴィン・ゼガーズ)が声をかけます。
ウェブサイトで知り合った二人は、実際に顔を合わせるのは初めてで、
お互いに本名ではなくハンドルネームを名乗りあっています。
ゼリーフィッシュと名乗った若い女性は自殺希望者で、この待ち合わせは心中をするためでした。
どういうふうに死にたい?と男性が聞くと、彼女は痛いのはダメで、顔が傷つくのも嫌だと答えます。
そこで男性が血を抜くことを提案します。
睡眠薬を飲んで血を抜けば、痛くもなく綺麗な遺体となって死ねるのです。
彼は後を追うからと言うとゼリーフィッシュは納得し、そのまま彼に血を抜かせます。
でも、男性は血の抜かれた彼女の遺体を大きな冷凍庫に収めた後、血のビンを持って片付け始めます。
そして、おもむろにビンから血を飲み始めました。
それにしても、何だか不気味なのに切なくなるような物語でした。
特に前半は気色悪いシーンもあって、うわーっと思いながら観ていたのですけど、
主人公のサイモンの静かなたたずまいを観ているうちに、次第に心が静かになっていきました。
特に、彼が相手に苦痛とか痛みを感じさせるのを怖がっているように思えた時、
そして、だれかれ構わずに血を抜くのではないと知った時に、
彼が何を求めていたのかが少しだけ分かったような気がしました。
ラストシーンがとても美しく見えました。
本当は悪いことなのにこんなに美しく見えるなんて罪だなあとちょっと感じた1本です。
監督: 出演:ケヴィン・ゼガーズ ケイシャ・キャッスル=ヒューズ 蒼井優 アデレイド・クレメンス トレヴァー・モーガン アマンダ・プラマー クリスティン・クルック レイチェル・リー・クック
2011年 日本/カナダ 原題:VAMPIRE
→
公式サイトはこちらへ http://vampire-web.com/opening.html