草原の椅子

宮本輝著の同名小説を原作に、成島出監督が生き方に悩む大人たちの姿を描いた映画です。
旅の目的地、パキスタンのフンザはどんなところだろうと気になっていました。
旅の中で出会った壮大な砂漠と雪山、そして子供たちの輝く笑顔が心に残るような作品でした。

4歳の孤独な少年と出会った大人たちは、新たな人生を歩む決心をしました。

人生の新たな転機を迎えた男女の物語です。
カメラメーカーに勤める遠間憲太郎（佐藤浩市）が帰宅してビールを片手にくつろごうとしていた時、
取引店の社長・富樫（西村雅彦）から突然に連絡が入ります。
彼は全身に灯油を浴びてタクシーにも電車にも乗れず、立ち往生していたのです。

車で迎えに行って風呂に入らせたところ、富樫はとても感謝して遠間を呑みに誘いました。
そして、酒に酔っていい気持ちになった彼は遠間に、二人ともいい年ですけど同じ50歳同士ですし、
仕事の垣根を越えて親友になりましょうと言い始めます。
遠間はちょっと困った顔をしながらも、富樫に合わせて親友になりましょうと応えました(^^ゞ

同じ頃、遠間のひとり娘の弥生（黒木華）が4歳の少年・圭輔（貞光奏風）を家に連れて来ました。
圭輔は母に虐待を受けていたようで、4歳なのに言葉をほとんど話しません。
母親は家を出て、血の繋がっていない父も働くために手をこまねいているような状況だと知った弥生は
少年に出来るだけ愛情を注いで世話をしたいと願ったのです。
最初は渋い顔をしていた遠間も、次第に圭輔を大切な子供だと思い始めました。

それにしても、人は何歳になっても悩みながら生きて行かなくてはならないのですよね。
浮気が原因で離婚し、その後は仕事一筋だった遠間。
誠意を持って商売すること大切にしていたのに、店の状況が危なくなってきた富樫。
理由があって離婚し、今はひとりで小さな店を切り盛りしている貴志子（吉瀬美智子）。
それぞれが人との出会いや旅をきっかけに、人生を変える決心をします。
そんな彼らの姿を分かるなあと思いながら観ていました。

新しい未来への不安や、それ乗り越えようとする心情も合わせて伝わって来て、思わず応援したくなりました。
観終わった時、静かだけどいい物語だったなあとしみじみ思った1本です。



監督：成島出　出演：佐藤浩市　西村雅彦　吉瀬美智子　貞光奏風　黒木華　中村靖日　小池栄子　AKIRA　若村麻由美　井川比佐志
2013年　日本
（20130124）

→公式サイトはこちらへ　http://www.sougennoisu.jp/

追伸
この映画は試写会で観ました。公開は2月23日以降の予定です。