少年H

戦時中の人々の生活を少年の視点で描いた妹尾河童著の同名小説を映画化した家族のドラマです。
ベストセラーの原作は未読ですけど、少年の目から見たこの時代はどんなものだろうと気になっていました。
純粋で真っ直ぐな少年を取り巻く大人の世界は、歪んだ怖さを伴いながら戦争へと突き進んでいました。

戦後の庶民たちのパワーに、これが本来の生活なのだろうなとしみじみ感じました。

戦争の影が色濃く迫りつつあった昭和初期から始まる物語です。
妹尾肇“H”（吉岡竜輝）は小学校に通う元気な男の子。近所の幼馴染ともいつも楽しく遊んでいます。
父は洋服の仕立職人で、外国人の多い神戸ではひいきの客も付いている評判の洋服店を開いていました。

商店街に店を構えている彼の家は普通の近所付き合いをしていましたけど、
家族揃ってクリスチャンという、当時ではちょっと特異な家でもありました。
夕食時には、アメリカへ帰った外国人から届いたエンパイアステートビルの絵葉書を見ながら、
楽しくアメリカは凄いなあとおしゃべりもしたりしています。
でも、しばらくすると仕事や教会で外国人と付き合いのある妹尾家の周りに不吉な噂が流れ始めました(T_T)

それにしても、本当に素直な視点で綴られている物語ですね。
世間の流れに流されず、自分の考えをしっかり持つようにと父に言われながら育った少年Hは
学校でも素直な意見を言ってしまい、教官ににらまれるような毎日です。
悔しい思いもいっぱいしますけど、父に諭されながら世間と自分のギャップを受け止めて行きます。

そんな中、Hの心の強さが見せる優しい友情には泣かされました。
こいつは大人になってもきっと人に信頼される大物になるなあという感じですね(^^ゞ
その後、空襲の激しさや、全てを失った苦しみを彼と一緒に体験します。
そして、戦後の大人たちの変貌振りに怒りを覚える彼の姿に、彼の感情を真っ直ぐに受け止めながら
スクリーンを見つめていました。

こんな時代の中でも自分のやりたい道を決められた主人公の強さにはちょっと感動でした。
観終った時、戦時中という時代の怖さを感じると共に、それでも強く生きることの大切さを実感した1本です。



監督：降旗康男　出演：水谷豊　伊藤蘭　吉岡竜輝　花田優里音　小栗旬　早乙女太一　原田泰造　佐々木蔵之介　國村隼　岸部一徳
2013年　日本
（20130810）

→公式サイトはこちらへ　http://www.shonen-h.com/