田中慎弥著の話題の同名小説を青山真治監督が映画化した人間ドラマです。
原作は未読ですけど、この物語をどのように映像化するのだろうと気になっていました。
宿命のような父子のつながりと、彼らを取り巻く女性たちの強さに圧倒されるような作品でした。
女性はしたたかで強いなあと思いながらエンドロールの音楽を聴いていました。
ある夏の日の出来事から始まる物語です。
高校生の遠馬(菅田将暉)は学校帰りに母(田中裕子)へ顔を見せると家へと向かいました。
父(光石研)の夜毎の暴力に耐えかねた母は、遠馬が幼い頃に離婚をしています。
でも、母は近所で魚屋を営んでおり、いつでも会いにいける存在でした。
遠馬はいつも社の神輿蔵で恋人・千種(木下美咲)と逢瀬を重ねていました。
このところ、彼女との逢瀬が恋しくて、いても立っても居れない気持ちに囚われています。
その中には自分に父のような暴力的な性癖があるのではないかという不安も隠されていました。
彼女は遠馬の父が暴力を振るうことを知っていましたけど、遠馬はやらないと信じています。
そんなある日、彼の家で暮らしている現在の父の恋人・琴子(篠原友希子)から、子供が出来たと聞かされました。
産んでもいいかと尋ねる琴子の言葉にどうでも良いそぶりを見せながらも、遠馬は動揺を隠せません。
衝動的に神輿蔵まで千種を呼び出した彼は、強引に千種に迫りながら、彼女の首に手をかけてしまいます。
そんな遠馬の行動に怒りを覚えた千種は、蔵を飛び出すと彼からの連絡を絶ちました。
それにしても、意外に爽やかな余韻を感じる作品でした。
最初は暴力に支配される女性たちの姿を描いているのかと思いましたけど、
次第に女性たちの強さが見え隠れしてきます。
彼女たちは負けてばかりではないのです。
観ているうちに、暴力に囚われる父を
生かすのも殺すのも女たちなのだなと実感しました。
そして、自分では忌み嫌う衝動に囚われた遠馬を、女性たちは包み込むように守っていきます。
そんな女性たちを演じた田中裕子さん、木下美咲さん、篠原友希子さんの演技が心に残りました。
観終った時、関わった女性たちの自然な笑顔が一番心に残った1本です。
監督:青山真治 出演:菅田将暉 木下美咲 篠原友希子 光石研 田中裕子
2013年 日本
(20130909)
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