北の方にある地方都市で生きたひとりの男の人生でした。
あるジャーナリストへ追悼記事の依頼が来るところから始まる物語です。
人物像を追った記事を得意とする有名ジャーナリスト(スン・リャン)のもとへ、
先日亡くなったオルドス警察署長ハオ・ワンチョン(ワン・ジンチュン)の追悼記事の依頼が入りました。
誰もが良い人だったと認めるという人物像を聞いたジャーナリストは、その評価に疑いの目を向けます。
そして、自分で調査をしてから納得した上で記事を書くことを条件に仕事を引き受けました。
ジャーナリストは彼の生い立ちから現在までをじっくりと追い始めました。
警察部隊に入って仕事がきつい刑事部へ入り、昼夜問わず必死に事件を追いかけていたこと。
ハオ・ワンチョンは発生する殺人事件の重さを心に受け止めて、解決するまで何が何でも諦めません。
当時は彼の同僚で後に部下となる元警察官も、彼の手を抜かない仕事ぶりに感心していました。
そんな中、幼い娘を含める一家全員を惨殺するというショッキングな殺人事件が発生します。
ハオ・ワンチョンも何度も現場に足を運んで、何とか手がかりを探そうとしました。
でも、どうしても解決できないまま年月が過ぎていきます。
そして、ますます仕事にのめりこむハオ・ワンチョンは、家族との時間がほとんど取れなくなっていきました。
それにしても、本当に真面目な人でした。
警察署長という地位に就いても、賄賂は全く受け取りません。
賄賂を渡すことに慣れていた業者たちは戸惑いを隠せません。
ハオ・ワンチョンは無理に渡そうとする業者たちを追い返します。誘われた宴席も断ります。
そして、公共事業を進めるためにどうしても資金が必要になった時は、
彼らが冗談で言った酒の強要を受け止め、最後まで飲み続けて業者を納得させました。
そんな人だけに、家族にとっては決して良い人ではありませんでした。
親兄弟にも厳しく、例え交通違反でも罪になることをしたら誤魔化すのではなく自首しろといいます。
昼も夜も事件現場へ駆けつけるため、愛する妻(チェン・ウェイハン)と娘にはほとんど会えません。
妻には期待をするだけ裏切られてしまうような夫だったのです。
妻の硬い表情と冷たい視線に、その辛さをしみじみと感じました。
それでも、彼が真摯に仕事をしている姿勢は、万人が認めるのも納得でした。
彼の関わる事件もこの社会を感じさせてくれるようなものが多くて考えさせられました。
また、彼の仕事で少しずつ町全体が良くなっていく様子に、彼も生きがいを感じていただろうなと思いました。
そして、そんな真面目さが彼の命を縮めてしまったことが哀しかったです。
観終った時、この人物の映画が創られたことにも考えさせられるものがあるなと感じた1本です。
監督:ニン・イン 出演:ワン・ジンチュン チェン・ウェイハン スン・リャン ホウ・イエンスン バイ・ボー チャン・ジエ ユアン・リージエン
2013年 中国 原題:To Live and Die in Ordos
(20131019)
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