一人の少女が過ごした夏の日の数日間を描いたヒューマンドラマです。
『歓待』の深田晃司監督作品なので、どんな物語が紡がれるのか気になっていました。
普通に暮らす人々の中にある普通じゃない心の状況が少しずつ明かされていく展開に、
観ている方の心もぞわぞわしてくるような作品でした。
みんな一筋縄では行かないものを抱えていました~
朔子(二階堂ふみ)が夏休みを過ごしに叔母・海希江(鶴田真由)の家を訪れるところから始まる物語です。
浪人生の朔子は受験勉強の気分転換に、海辺の町にある海希江の故郷の家へ来ました。
近所には海希江の幼馴染の兎吉(古舘寛治)一家が住んでいて、朔子も笑顔で迎えられます。
その中でも歳の近い孝史(太賀)は、遊び友達のいない朔子にとっては誘いやすい友達になりました。
でも、兎吉一家には微妙な不協和音が漂っています。
苦労をかけた挙句に妻を亡くした兎吉は、大学へ通う娘・辰子(杉野希妃)だけには不自由をさせないと
今は儲けを求めて許可を取らないままラブホテルを経営しています。
そんな父の状態にいらだつ心を抱えている辰子は不満を隠せません。
そして、そんな彼女の状況は兎吉一家がそれぞれ抱える心の問題の一端に過ぎませんでした。
それにしても、何か落ち着かない雰囲気に包まれている作品でした。
誰もが不穏な心を抱えているような気がします。
兎吉が無許可で経営しているラブホテルには、反対の住民運動が起きています。
もともと目立っていはいけない仕事だけに、問題が大きくなってくると営業は厳しい状態です。
そんな中、辰子も、そして実は海希江も秘密の恋を抱えています。
そして、震災で福島から兎吉の家へ単身で避難してきている孝史は心に深い傷を抱えています。
誰もが知らないその傷の原因は、実は震災よりも前に始まっていました。
そんな危うい不協和音の中、何かを感じながらも朔子は風のように流れていきます。
特に孝史の心の痛みを共有しながら静かに寄り添う朔子の存在はとても爽やかに感じました。
観終った時、この夏休みに朔子は何を感じ、どんな将来の夢を抱いたのだろうなあと考えるのと同時に
朔子の自然な爽やかさが印象に残った1本です。
監督:深田晃司 出演:二階堂ふみ 鶴田真由 太賀 古舘寛治 大竹直 小篠恵奈 杉野希妃
2013年 日本/アメリカ
(20131017)
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公式サイトはこちらへ http://sakukofilm.com/追伸
この映画は東京国際映画祭で観ました。公開は2014年1月18日以降の予定です。