原題の「WOMAN IN GOLD」も深い意味を持っていました。
マリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)の姉の葬式から始まる物語です。
葬式を終えたマリアは親しい友人に法律に詳しい人を知らないかと訪ねたところ、
ちょうど彼女の息子が弁護士だと言って、話をしてくれると約束してくれました。
姉の遺品の中から気になる手紙を見つけたので、専門家に読んで欲しかったのです。
後日、彼女の息子のランドル・シェーンベルク(ライアン・レイノルズ)が
マリアの家を訪ねて来てくれましたが、あまり乗り気ではありませんでした。
でも、マリアが自分のものだと主張する絵を調べたランドルはその高価に驚いて俄然やる気を出します。
とりあえず、事務所の上司にも1週間のオーストリア出張を認めてもらい、初めてオーストリアへ赴きます。
二人は地元のフベルトゥス・チェルニン(ダニエル・ブリュール)の協力を得て、
問題となった叔母アデーレの遺書や叔父の遺書などを調査し、この返還の正当性を確信しました。
しかし、マリアの美術品返還審問会での証言も虚しく、請求は却下されました。
それにしても、この時代の物語は切ないですね。
話題は絵の返還かも知れませんけれど、この作品の本当のテーマは第二次世界大戦で
非情な運命に翻弄されたマリア・アルトマンの人生とユダヤの人々の哀しみのような気がします。
特に、これまで一緒に暮らしていた隣人がナチスと共に敵となって自分たちを虐げてくるという状況が
スクリーンで少し描かれているだけでも、言葉も無いくらい辛かったです。
今回のマリアの叔母を描いた絵も、オーストリアの美術館にあった時は、ユダヤ人との関わりを隠すために
「WOMAN IN GOLD」というタイトルになっていました。
絵はマリアとランドルの努力の甲斐もあってアメリカへやって来て、
今では正式名称の「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ」として知られています。
それだけでもこの絵はほっとしているかもと感じました。
調停で勝訴した後、マリアが勝っても消えることの無い哀しみに暮れる姿が心に残りました。
観終った時、壊された幸せはもうどんなことをしても元には戻らないのかもとちょっと思ってしまった1本です。
監督:サイモン・カーティス 出演:ヘレン・ミレン ライアン・レイノルズ ダニエル・ブリュール ケイティ・ホームズ タチアナ・マズラニー マックス・アイアンズ
2015年 アメリカ/イギリス 原題:WOMAN IN GOLD
(20151128)
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公式サイトはこちらへ http://golden.gaga.ne.jp/