大切な人を守ると決めた男の強さを実感させられました。
多くの遺体が火葬されるシーンから始まる物語です。
スリランカで兵士として戦ってきた男(アントニーターサン・ジェスターサン)は内戦で家族全員を亡くし、
闘うことに疲れて果ててしまいました。
戦闘服を焼き捨てた彼は、難民キャンプに集まって来た女性ヤリニ(カレアスワリ・スリニバサン)と
少女イラヤル(カラウタヤニ・ヴィナシタンビ)の3人で偽装家族を作ります。
亡くなった3人家族の名を貰い、男はディーパンという名前になります。
目的はフランスへの亡命でした。
フランスへ渡った当初は路上での違法な玩具販売でしたけど、
やがて亡命を認められて住み込みの仕事を貰います。
パリ郊外にある団地の管理人の仕事は、言葉に慣れない彼らには失敗もありつつも、
言葉を覚えていくうちに少しずつ生活が落ち着いて来ます。
また、小学生のイラヤルは学校に馴染めずにいましたけど、間も無く言葉をマスターしていきました。
団地の一画には不良たちのたまり場があり、決して治安は良くありません。
ヤリニはいとこのいるイギリスへ渡りたいと訴えます。
でも、自分が連れてきた少女イラヤルまで置いて出て行こうとするヤリニの行動をディーパンは責め
無理にでもヤリニを留まらせようとします。
でも、仮釈放のドラッグ売人を中心に、付近の治安はますます悪化していきました(T_T)
それにしても、ディーパンは本当に真面目な男ですね。
家族を亡くして心の支えが無くなった彼は、フランスへ渡った当初はちょっと頼りない感じです。
でも、家と仕事が与えられた彼は、その仕事をとても真面目に遂行していきます
その姿に誰もが彼の誠実さを認め、他人であるヤリニやイラヤルにとっても心の支えとなっていきました。
そんな、ようやく手に入れたささやかな平和を脅かすのがドラッグ売人の存在です。
男を中心に次第に治安が悪くなり、銃撃戦が起きるまでになります。
過去のしがらみや現在の暴力から3人の生活を守ろうとしていたディーパンが闘いへ身を投じていく姿は、
まるで鬼神のようで、悪夢の中にいるように感じました。
そして、全てが終わった時、彼を現実に戻すヤリニの存在にほっとしました。
観終った時、誰もが幸せな生活を送られるような世界が待っているといいのになとしみじみと思った1本です。
監督:ジャック・オディアール 出演:アントニーターサン・ジェスターサン カレアスワリ・スリニバサン カラウタヤニ・ヴィナシタンビ ヴァンサン・ロティエ
2015年 フランス 原題:DHEEPAN
(20160316)
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公式サイトはこちらへ http://www.dheepan-movie.com/