人生がいっぱい詰まった映画でした。

昭和40年。炭鉱の町いわきでは、石炭産業の斜陽により炭鉱閉鎖の危機に陥っていた。
企業と町にとっての最後の切り札は、温泉を利用して“ハワイアンセンター”を作ることだった。
だが、2000人のリストラに対して新しいセンターの雇用は500人。
そして、命を懸けた炭鉱の仕事に誇りを持っていた町民たちは
どんなものかも分からないようなハワイアンセンターの建設に猛反対していた。
そんな中、ハワイアンセンターの目玉であるフラダンサーの募集が始まった。
しり込みする少女たちの中で目を輝かせているのは早苗(徳永えり)ひとりだけだった。
彼女は炭鉱しか生きる道の無かった中で
ダンサーという職業に自分の人生を懸けてみたかったのだ。
そんな彼女の熱意に付き合うように、親友の紀美子(蒼井優)もダンス教室に通い始めたが…

めずらしく随分と早い試写会に行ってきました。
南海キャンディーズのしずちゃんがジャージ姿で踊っている予告編しか知識が無かったので
コメディっぽいストーリーかと思っていたら、もっともっと切ないドラマでした。
仕事も人生も選択肢など無かった時代に
ダンスに出会うことで新しい人生を歩もうとした女性たちと
新しい時代に取り残される不安を抱きつつも生きていかなくてはならない人々や
家族の絆が描かれていました。

新しい人生のために夫のリストラのためにと様々な理由によって、ダンスを選んだ女性たち。
また、SKDの花形ダンサーという経歴を持ちながら
寂れた町でのダンス指導の仕事を受けなくてはならなかったダンサー。
自分たちの何十年と命を懸けてきた仕事が紙切れ一枚で無くなってしまう炭鉱夫たちの辛さ。
葛藤の中でも家族の希望を大切にしようとする親子や兄弟の愛。
そんな人たちのひとつひとつの想いが胸に響きました。

人間ドラマを描きつつもポイントとなったのはダンスです。
フラダンスをよく知らなかった少女たちにそのすばらしさを伝えたのは
まどか先生の情熱的なダンス。
そして最後までフラダンスを否定してきた母に、ダンサーという人生もあることを知らしめたのも
紀美子の想いのこもったダンスでした。
それぞれのダンスを先生役の松雪泰子さんと紀美子役の蒼井優さんが踊っていて
美しくきらきらしていました。
またフラガールたちのダンスも、明るい笑顔と共に輝いていました。
みんな頑張ったなあと感動しました。

爽やかな余韻とともに心に切ない想いの残った1本です。


(060611)