家族であり友人であった大切な人の死を受け入れられるようになるまでの
残された者たちの葛藤を描いた作品です。

オードリー(ハル・ベリー)は建築家の夫ブライアン(デヴィッド・ドゥカヴニー)や
二人の子どもたちと共に幸せな家庭を築いていた。
ブライアンはとても心の優しい人で、幼なじみの親友ジェリー(ベニチオ・デル・トロ)とは
彼がドラックに溺れた今でも昔と変わらない絆で結ばれていた。
一方、オードリーは自分と夫との時間を奪ってしまうようなジェリーのことを嫌っていた。
ある日、ブライアンは家族のために近所までアイスクリームを買いに出かける。
アイスクリームを買って車に乗ろうとした彼は、夫に殴られている女性を見かけて助けようとした。
だが、錯乱した男に銃で撃たれてしまった…

突然に支えとなる夫を亡くして心が不安定になる妻と
ドラッグに苦しみながらも親友の妻の手助けをしようする夫の親友。
そんな彼らの姿が本当に苦しそうで、観ていて胸が痛みました。

妻の提案で始まった家族3人とジェリーとの共同生活。
子どもたちはジェリーに父親の影をみつけ、次第に心を通わせ始めます。
しかし、精神状態が不安定になっている妻は、家の中に支えになる人がいる安心感を必要としながらも
時折、親友の行動に対して理不尽な怒りをぶつけてしまいます。
どうみても八つ当たりのような妻の怒りに対して、親友はとまどいながらも静かに謝ります。
その懐の深さはすごく人間の大きさを感じさせて、なんでこんな人がドラッグにはまったのだろうと
ちょっと不思議に思うくらいでした。
しかし、彼が共同生活に耐えられなくなった時、今度は彼の方が壊れてしまいます。

前半は妻が親友を頼っていたのですけど、後半になると妻が親友の支えになっていきます。
特にジェリーにはドラッグという弱点があり、それは一人では立ち直ることが出来ないくらいの難しい問題です。
やがて彼は禁断症状に苦しみながらも一番辛い山を越えた時、今度こそ立ち直ろうと決心します。

それにしても、ベニチオ・デル・トロの演技は圧巻でした~
一見怖そうな面立ちをしているのに、落ち着きと慈愛に満ちた表情をしていると
本当に優しさを感じさせてくれます。
特に父を亡くした子どもたちへの接し方があんなに優しく見えるのは
彼の演技だからこそだろうなあと感じました。

観終わった時、彼らが再生に歓びを感じつつ、原題の意味がようやく分かった~と思った1本です。

監督:スサンネ・ビア 出演:ハル・ベリー ベニチオ・デル・トロ デヴィッド・ドゥカヴニー
2008年製作 アメリカ/イギリス 原題:THINGS WE LOST IN THE FIRE
(080324)



追伸
この映画は試写会で観ました。公開は3月29日以降の予定です。