横山秀夫氏の同名小説を映画化した作品です。
1985年に御巣鷹山で起きた日航機墜落事故の情報を掴むために奔走する新聞記者たちの
ハードな1週間が描かれていました。

1985年8月12日、明日からの登山のために帰宅しようとしていた記者・悠木(堤真一)の元に
県警担当の記者・佐山(堺雅人)から電話が入った。
羽田発大阪行の日航機が行方不明になったらしいというのだ。
もし、墜落していてしかもその地点が群馬県だったら、
これは群馬県の地方新聞である北関東新聞にとって、創設以来のビッグニュースとなる。
社内全体が情報収集に騒然とする中、悠木に社長命令が下った。
それは、この事故の全権デスクという大役だった…

一人の記者の人生を通して、新聞の世界をとてもリアルに描いていました。
観ているうちに、まるで新聞社の中に自分もいるような圧倒的な雰囲気に飲み込まれました。

日航機墜落事故は22年以上の時が過ぎても、鮮明に記憶が甦る事故です。
夏休みでのんびり過ごしていた中、突然に起きた大惨事に
家族でずっとテレビに釘付けになっていた覚えがあります。

映像はその惨状をダイレクトに伝えてくれてインパクトも凄いですけど、情報量ではやはり新聞です。
人の声で伝えられるよりも多くのことを活字は伝えてくれます。
そんな紙面を作る裏で、記者たちがどのように動いて情報を入手し、
どのような判断によって紙面が作り上げられていくか…
そんな新聞社の姿が悠木と編集部を中心に描かれていました。

新聞は誰に向けて何を伝えるのか。
この問をずっと心の中に置きながら、悠木は動いていきます。
寝る間も無く働き続けた彼は、やがてあるスクープに突き進んでいきます。
その中で彼は自分の信条である“ダブルチェック”と真っ向から向かい合うことになります。

スクープを取ること。それは新聞記者の大きな夢です。
それに対して、読者への責任は情報の正確さを求めます。
小さくて力や設備の無い地方紙であること。
社長独裁による人間関係と圧力。
営業部門や偏見に満ちた上司との対立。
平のサラリーマンが人間関係の中で味わう不条理。
そんな記事の内容とは別の世界で紙面が作りこまれてしまう状況に置かれつつも
悠木は事故を必死に追っていき、そして結論を出しました。

それにしても主演の堤真一さんや堺雅人さんをはじめとする役者陣の演技の迫力は凄かったです。
一瞬に表れる表情が凄いインパクトで怖いほどでした。

観終わった後、会社で働くことや報道について考え込んでしまった1本です。



監督:原田眞人 出演:堤真一 堺雅人 山崎努 尾野真千子 遠藤憲一 田口トモロヲ でんでん
2008年 日本
(20080609)

追伸
この映画は試写会で観ました。公開は7月5日以降の予定です。