『ゲルマニウムの夜』の大森監督が創り上げたハードなロードムービーです。
希望を求め、全てを捨てて北の果てへと向かっていく若者たちの姿を
胸が締め付けられるような想いで見つめていました。
幼い頃に両親を亡くし、兄(宮崎将)と共に孤児院で育ったケンタ(松田翔太)。
今は毎日、孤児院仲間のジュン(高良健吾)と一緒に
ビルの解体現場で騒音と埃にまみれながら電動ブレーカーを握っていた。
仕事は重労働で低賃金。しかも現場を仕切っている男(新井浩文)はケンタを目の敵にして
暇さえあれば、陰険ないじめを続けていた。
ある日、とうとう我慢の限界に来たケンタは自分だけの未来を見つけるために
この暮らしから飛び出す決心をする。
旅の目的地は兄が服役している網走だ。
兄に会ったら、何かを教えてくれると確信していた。
そんなケンタを兄のように慕っていたジュンは自分もついて行きたいと訴えた。
そしてジュンの彼女カヨちゃんと共に、盗んだトラックで夜の街を走り始めた…
最初から最後まで、めちゃくちゃ衝撃的でした!
最悪な職場環境といじめ。学の無い彼らはこの仕事以外出来るものが無い。
そんな絶望的な日々から脱出しようとした若者たちの物語です。
怒りに任せて飛び出したケンタ。
ただ、彼の怒りはとても激しいですけど、兄に会えば希望は開けると信じていて
その希望を原動力として北へ進んでいます。
ケンタと一緒にいたくて付いて来たジュン。
彼はケンタの希望に自分の希望を重ねながら旅を続けています。
ジュンと一緒にいたくて彼を追いかけてきたカヨちゃん。
彼女はブスで頭の悪い自分を嫌っているために愛にすがるしか希望が無く、
ジュンとの愛を信じて旅を続けています。
そんな彼らの信じた旅は希望の方向には続いていませんでした。
それにしても出演者たちの演技が凄かったです~
主演の3人はもちろんのこと、兄役の宮崎将さんやケンタをいじめ続ける役の新井浩文さんなど
出てくる役者さんみんなが本当に強烈な演技を見せていました。
特に宮崎将さんの演じた兄ちゃんは翌日に夢でうなされたほど怖かったです(T_T)
旅の終わりにこんなに変わり果てた兄ちゃんが待っていたら
それはもう泣いちゃうでしょうという感じでした。
観終わった時、あまりの痛みにすぐには言葉がでなかった1本です。
監督:大森立嗣 出演:松田翔太 高良健吾 安藤サクラ 宮崎将 新井浩文 柄本佑
2009年 日本
(20091124)
追伸
この映画は東京フィルメックスで観ました。公開は2010年初夏の予定です。