今回はアメリカの金融危機問題がテーマです。
銀行に家を差し押さえられる人々が登場します。
彼らは長年住んでいた、または先祖から引き継いだ家と土地を借金のかたに取られてしまいます。
なぜ、借金をしたのか。
それは良い暮らしがしたかったから。加えて、家と土地があれば簡単に貸付をされたからです。
でも、金融危機が起きて世の中が不景気になり、返済が困難になってきます。
そして、ホームレスの人々がどんどん増加していきます。
一方で追い出された家を投資目的に買い漁る投資家たちがいます。
もちろん転売が目的です。そして、投資家たちはどんどん金儲けに走ります。
金の無い人はより貧乏に、金のある人はより裕福になっていく…
そんな二極化の世界がアメリカで広がりつつあるという事実が分かり易く映し出されていました。
監督の怒りはいろいろあるのですけど、一番の怒りは政府の援助を受けた金融機関に向かいます。
家を喪う人を救済しないくせに、家を奪う原因を作った企業だけ救うなんて…と誰もが思います。
何と言っても、建て直しのために使われた税金は巨額なのです。
そんな気持ちを代弁しながら企業にマイクを向ける監督のパフォーマンスは可笑しくて
にやりとさせられました(^^ゞ
怖いなあと思ったのは、映画に映し出されるアメリカの現状はやっぱり変だと言うことです。
以前は“誰にでもチャンスはある”みたいなアメリカンドリームは誰もが夢みることのできる希望でした。
それは、今でも夢として語られていると思います。
でもこの作品を観ていると、アメリカンドリームという実現不可で実体の無い希望に
貧困の中で苦労している人々が踊らされているだけなのかも知れないと思えてきます。
希望を持ち、一生懸命働いても借金で家を失ってしまう…
まるで日本でも起きつつある状況ではないのではと感じてしまいました。
年末に観るには微妙だなあと思ったのですけど、
観終わってみるとやっぱり考えさせられることが多い作品でした。
そして、こんなにヒットしなさそうな題材をしっかりと映画にしてしまうなんて
マイケル・ムーア監督は偉いなあとしみじみ思った1本です。
監督:マイケル・ムーア
2009年 アメリカ 原題:CAPITALISM: A LOVE STORY
(20091230)