夫を亡くし一人暮らしをしていた作家・太田弓子(馬渕晴子)のもとに一通のメールが届いた。
夫の仕事の都合でアメリカのバークレーに住んでいた娘・陽子の一家が、転勤で日本へ戻ってくるというのだ。
添付されていた孫・かおるの無邪気な写真に思わず笑顔になった弓子は一家の帰国を楽しみにしていた。
そんな弓子が外出先でふと気になったのは、近所に住んでいる小学生くらいの男の子。
以前に見かけた時もちょっと気になったが、どうも母親の静止も聞かずに走り始めてしまうらしい。
母親の「止めて」という言葉に思わず男の子を抱き止めようとした弓子に対し、
男の子はパニックを起こし、耳を押さえて叫びながら暴れだした。
そして、その子が自閉症だということを初めて知った…
映画の中には自閉症(オーティズム)の基礎知識がいっぱいでした~
私にとって自閉症というと思い浮かぶのは『レインマン』です。
コミュニケーションが上手く出来ない反面、ものすごい記憶力が印象的でした。
今回の『星の国から孫ふたり』では、幼い孫たちがふたりとも自閉症と診断されます。
自閉症の子供たちがこの世界をどのように感じているのか、
時々その心を噴出しにして見せてくれるシーンが登場して面白かったです。
色を怖がったり、視覚的に歪んで見えたり、喧嘩や大声をとても敏感に感じてしまうなど、
彼らはこんなふうに感じているのかと知ることが出来ました。
言葉が上手く話せず、コミュニケーションの取り難い子供たちには、両親も祖母も苦労します。
夫の母には躾が悪いからだと理解の無い言葉を突きつけられたりします。
自閉症(オーティズム)への理解が一般的ではないのが現状なのです。
でも、やはり二人の子育てには苦労よりも喜びの方が多いです。
子供たちの優れたところを認めてゆっくりとした成長を心から楽しんでいる両親の姿はいいなあと感じました。
自閉症のことを外国では一般的に“オーティズム”と言うそうです。
アメリカではサポート体制が充実しているようで、学校も家庭教育も専門のスタッフが無料でついてくれます。
幼稚園や学校を探すのでさえ苦労する日本との違いにびっくりです。
アメリカの福祉を知るほど日本の福祉の遅れを感じてがっかりしてしまいました(-_-;)
救いなのはこの一家が明るさを忘れないことと、積極的に動いて協力者や理解者を増やしていくところです。
子供たちが生活していくには、家族だけでなく近所などもっと広い社会の協力も必要です。
子供たちのことを書いた定期通信紙を近所に配るというのはいいアイディアだなあと感じました。
また、育児の疲れや子供たちの将来への不安から挫けそうになる母・陽子を
祖母である弓子は前向きな言葉で励まします。
弓子のような明るさと前向きな心は、観ている者の心も明るくさせてくれます。
弓子のような人がどの家庭にもいたら本当に幸せだろうなあと考えてしまいました。
どちらかというと演技や演出的には教育ビデオを見ているような感じがしましたけど、
それ以上に知って良かったと思う情報がいっぱいでした。
この作品を多くの人が見て、自閉症(オーティズム)のことを多くの人が知ってくれたらなあと感じた1本です。
監督:槙坪夛鶴子 出演:馬渕晴子 加藤忍 比留間由哲 小野貴琉 小野駿希 上野楓恋 小林桂樹 紺野美沙子
2009年 日本
(20100222)