フランス企業のモスクワ支社にいる技師ピエール(ギョーム・カネ)は上司からある人物への伝言を頼まれた。
娘の晴れ舞台を中座して外に出た彼は、自分の車に乗り込むと相手から合図が来るのを待っていた。
だが、待っていた男(エミール・クストリッツァ)は実はピエールの車に乗り込んでいた。
突然に声をかけられて驚くピエールに、男は情報の書いたメモを渡した。
だが、ピエールが上司から頼まれてやってきた一般人でスパイでは無いと知ると、
がっかりした態度を取り始める。
男はピエールにはこのメモの情報の重要さが理解できないと嘆くと、
次はプロのスパイをよこせと言って車を去った。
ピエールにはわからなったメモはその重要性により、
フランス大統領の手へからアメリカ大統領の手へ渡っていく。
そして、ピエールの会った男には“フェアウェル”という英語のコードネームが付けられた…
一人のスパイの行為が旧ソ連崩壊へと繋がっていきました。
旧ソ連の極秘情報をフランスDSTに渡したスパイの物語です。
その男はKGBの中でも情報の中枢にいるグリゴリエフ大佐(エミール・クストリッツァ)です。
彼はこのままではソ連が発展しないと考え、現体制を壊すために西側へ情報を渡そうと考えます。
その頃のソ連は西側から技術を盗んで自分のものにし、発展していました。
開発するより出来たものを盗む方が得だと考えたのです。
グリゴリエフ大佐から届けられた資料には、スペースシャトルの設計図からホワイトハウスのパスワードまで
西側が仰天するような情報が記載されていました。
グリゴリエフ大佐は愛人を持つような男である反面、妻と息子を深く愛しています。
特に大学生の息子とは最近ちょっと疎遠になっているのが寂しいのですけど、
愛する息子に明るい未来を渡したいと考えるのです。
それが体制崩壊とはすごいです。さすがKGBの大佐が考えることは違いますね。
そして、グリゴリエフの望む通り、彼の渡した情報は西側との情報戦からソ連を退かせるのに
十分なものになりました。
一方のピエールは本当にごく普通の一般人です。
二人の子供はまだ幼く、スパイなどしたいとも思っていません。
特に幼い頃に東ドイツから亡命したという過去を持つ妻は、彼のスパイ行為を知ると
家族を危険にさらしたと怒りに震えたほどです。
でも、技術の知識を持つ彼は、グリゴリエフの資料に目を奪われ夢中になります。
そして、グリゴリエフが息子のためにソ連を変えたいという願いから行動していることを知ると、
自分もグリゴリエフと一緒に頑張ろうと考え始めました(^^ゞ
それにしても、グリゴリエフを演じたエミール・クストリッツァの存在感はさすがですね。
監督として数々の映画祭の賞賛を浴びてきたエミールは、今回は役者として主役を演じています。
彼の何となく愛に不器用そうなところや信念に向かって突き進む姿は
グリゴリエフのキャラクターにぴったりでした。
そして、グリゴリエフと連絡を取り合っていたピエールを演じたギョーム・カネも
いつの間にか巻き込まれてグリゴリエフと深く関わりあっていく民間人を自然体で演じていました。
相変わらず世界史が全くダメな私はこの映画ではじめてこの事件のことを知りました。
一人の男の犠牲でこれだけのことが起こせるのかとびっくりでした。
観終った時、グリゴリエフの息子は幸せになったかなあとちょっと思ってしまった1本です。
監督:クリスチャン・カリオン 出演:エミール・クストリッツァ ギョーム・カネ アレクサンドラ・マリア・ララ インゲボルガ・ダプコウナイテ ウィレム・デフォー
2009年 フランス 原題:L'AFFAIRE FAREWELL/FAREWELL
(20100901)
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