山間にある長野県大鹿村で“ディア・イーター”という鹿料理店を開いている善(原田芳雄)は
今日も歌舞伎の稽古に余念がない。
300年も続く伝統の“大鹿歌舞伎”は村を挙げての一大行事だ。
その主役を張る善は舞台を1週間後に控えて張り切っていた。
そんなある日、18年前に駆け落ちしたままだった善の妻・貴子(大楠道代)と
幼なじみの治(岸部一徳)が善の前に現れる。
貴子が前頭葉の病気になって記憶を無くし始めて言動が不安定になり、
彼女を支えきれなくなった治が、善に貴子を返しに来たのだ。
舞台の仲間内で小さなゴタゴタが起こることがあっても仲裁役になっていた善だったが、
今回自分に起きたことには本当に参ってしまう。
そしてとうとう、あと数日後で舞台という時に、舞台を降りると言い始めてしまった…
様々な感情がいろいろと交差しているのに、何となく全てを受け止めてしまうような
村人たちの大らかな雰囲気が面白かったです。
18年も離れていた夫婦の愛と伝統の歌舞伎が織り成す人間ドラマです。
前半は駆け落ちして村を出ていた妻と親友が戻ってきたというドタバタ劇です。
村にリニアモーターカーを誘致するかという問題で村の中がちょっとごたごたしていますけど、
300年の伝統の前には、それなりに一致団結していました。
そんな中で、18年前に駆け落ちしていた二人が登場します。
善にとっては青天の霹靂のような事態で、彼はすっかり舞台のエネルギーを吸い取られてしまいます。
最初はそんな事態を遠巻きに見ていた村人たちが、それでも二人を迎い入れようとする雰囲気が面白かったです。
後半は歌舞伎の舞台がメインです。
実は私は歌舞伎や伝統芸が得意ではなくて、途中で眠ったことも…
でも、この映画の歌舞伎は分かりやすい上に、いろいろ役の心情を解説してくれているので
とても観やすかったです。
また、出演者たちの迫力あるお芝居も良くて楽しかったです。
それにしても、さすがは上手い役者さんが揃っていました~
舞台も含めて本当に見応えがありました。
特に原田芳雄さんと岸部一徳さんの掛け合いが可笑しくて、二人で言いたいことを言い合っているシーンは
気の毒だと思いながらも、つい笑わされてしまいました(^^ゞ
村と言うのは狭い世界だと聞きますけど、温かい心の人が集まればこれほど居心地の良い場所はないなと感じました。
そんな村で今でも続いている歌舞伎を一度は見てみたいなと思った1本です。
監督:阪本順治 出演:原田芳雄 大楠道代 岸部一徳 冨浦智嗣 松たか子 佐藤浩市 石橋蓮司 でんでん 三國連太郎
2011年 日本
(20110609)
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公式サイトはこちらへ http://ohshika-movie.com/追伸
この映画は試写会で観ました。公開は7月16日以降の予定です。