中国の東北にある朝鮮族自治州でタクシー運転手をしているグナム(ハン・ジョンウ)は麻雀が好きで
今夜もタクシーの売り上げを賭けにつぎ込んでいた。
だが、彼は勝負の弱くて、いつも相手に振り込んでは金を失っていた。
翌朝、眠っているグナムをたたき起こしたのは借金取りの2人組。
実はグナムは愛する妻を韓国へ出稼ぎに行かせる渡航費用を借金で工面したのだ。
そんなある日、借金取りがグナムによいはなし救世主を持ってきたと笑顔で言い始めた。
ある男が借金の肩代わりをしてくれたと言うのだ。
早速、その男に会いに行ったグナムは彼から意外なことを持ちかけられた。
それは、ソウルへ行ってある男を殺せというものだった…
執念のまま進んでいく主人公たちはすさまじかったです。
朝鮮族の男と彼が関わることになった殺人事件を巡るサスペンスアクションです。
出だしはどんな展開になるのだろうかと思っていたら、途中から血みどろの戦いになり、
殺人事件にかかわる人物も次々と登場してきて、謎解きとしても面白かったです。
主人公のグナムと彼を雇ったミョン社長(キム・ユンソク)がすごいです。
騙されて、捨て駒に仕立てられたグナムは、自分の人生は逃げられずに終わると悟っていても、
自分が関わることになった事件の真相を追い求めます。
警察の手から必死に逃げ伸びる姿は、邦題の通り“哀しき獣”という雰囲気でした。
でも、もっと凄い迫力を見せていたのは彼を騙したミョンです。
複数の刺客など物ともせずに鈍器や斧1本で返り討ちにし、血みどろになりながら笑っているのです。
彼もまさしく“獣”そのものでした。
グナムの執念とミョンの圧倒的な強さは、最後まで目が離せませんでした。
それにしても、本当に激しいアクションでした~
前作の『
チェイサー』はサイコサスペンスだったので心理的に怖かったのですけど、
今作はもっと外に向かって発散させるような血みどろの戦いが繰り広げられました。
視覚的にはきつかったですけど、面白く(?)観ることが出来ました。
また、この作品で初めて“朝鮮族”という人々のことを知ったのも良かったです。
観終わった時、結局、この人たちを激しく動かしているのは愛憎の情なのだなとしみじみ思いました。
これをハリウッドでリメイクした時、この何とも侘しい雰囲気はどう表すのかなあとちょっと思った1本です。
監督:ナ・ホンジン 出演:ハン・ジョンウ キム・ユンソク チョ・ソンハ
2010年 韓国 原題:THE YELLOW SEA/黄海
(20111026)
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公式サイトはこちらへ http://kanashiki-kemono.com/追伸
この映画は第24回東京国際映画祭で観ました。公開は2012年1月7日以降の予定です。