家族の庭

マイク・リー監督の最新作です。前作『ハッピー・ゴー・ラッキー』は映画祭でしかお目にかかれなかったので、
今作は公開されるのだなと楽しみにしていました。
幸せな夫婦を中心に１年の様子を描く中で、前作以上に心にずんと来るような痛みを感じさせる作品でした。

ラストの表情にはうわーっと思ってしまいました。

一組の夫婦を中心に様々な人の人生をさりげなく描いた人間ドラマです。
夫婦の名前はトム（ジム・ブロードベント）とジェリー（ルース・シーン）。
まるでアニメのようですけど、こちらの二人は明るくて素敵な熟年夫婦です。
地質調査の仕事をしているトムと病院でカウンセラーの仕事をしているジェリーは本当に仲の良い夫婦で
彼らの周りには、彼らの幸せのオーラに惹かれるように様々な友人が集まります。

今作ではある年を四季ごとに描く４部作のような形式をとっています。
四季すべてに登場するのがこの夫婦とジェリーの同僚のメアリー（レスリー・マンヴィル）です。
メアリーは最初の方では明るくて無邪気な中年女性という感じなのですけど、
やがて彼女には結婚に失敗してその後の恋愛にも破れ、寂しい心を抱えながら暮らしている人だということが分かって来ます。
全編で夫婦の幸せさとメアリーの不幸せさを映し出していて、観ている者はどうしてもその姿を対比させてしまいます。
そして、人の幸せってなんだろうなといろいろ考えさせられてしまいました。

それにしても、こんなにさりげなく人々の会話を映し出しているだけなのに心が痛くなりますね。
出だしでは家族に悩まされて不眠症になっている主婦を登場させているので、夫婦や家族がいるから幸せだというのではなくて
メアリーが自分を見失っているのが一番不幸せになっている原因だということが分かるのですけど、
それにしても見えない出口の前で縮こまっているような彼女の表情は痛々しかったです(T_T)

観終わった後も、メアリーの表情が心に焼き付いていました。
観終わった時、しばらく人生について考えてしまいそうだなと感じた１本です。



監督：マイク・リー　出演：ジム・ブロードベント　ルース・シーン　レスリー・マンヴィル　オリヴァー・モルトマン　デヴィッド・ブラッドリー　ピーター・ワイト　カリーナ・フェルナンデス　マーティン・サヴェッジ　ミシェル・オースティン　イメルダ・スタウントン
2010年　イギリス　原題：ANOTHER YEAR
（20111116）

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