クリスマスの夜に様々な人生が交差していきました。
攻撃で荒れ果てた町の風景から始まる物語です。
そこではクリスマスツリー用の樅ノ木を取ろうと出かけた少年と少年を探しに来た母親に
なぜか銃の照準が向けられます。
誰が何のために二人へ銃を向けているのかは分かりません。
二人を狙った人物は引き金を引く指に力を入れ始めます。
そんな緊張のシーンから一転、舞台は雪景色のノルウェーへと移ります。
クリスマスイブの夜は1年で一番人が恋しくなる時間です。
妻の元に子供二人を残して離婚した男パウル(トロン・ファウサ・アウルヴォーグ)は
子供たちが恋しくて仕方がありません。
でも、新しい恋人がいる元妻トネ(クリスティーネ・ルイ・シュレッテバッケン)には玄関の鍵を変えられ
そう簡単には子供たちに近づけません。
思い余ったパウルは子供たちにプレゼントを渡すために、思い切った作戦を実行します。
パウルの友人の医師クヌート(フリチョフ・ソーハイム)はいったん家に帰りますが、
夜勤の救急を担当していたために緊急の呼び出しを受けて、すぐに再び家を後にします。
彼は夜勤は手当が付くし稼げるからと言い訳をしますけど、
当然、妻エリサ(セシル・モスリ)は面白くありません。
子供のいない二人なので、エリサは一人寂しく家に残されてしまうのです。
エリサは夫が去った後、ため息をつきました。
クヌートは車を呼び出した相手の指定場所へ走らせました。
待ち合わせ場所では若い男が一人で待っています。
でも、乗り込んだ男はクヌートにいきなりナイフを向け始めました。
薬を狙った犯行だと思ったクヌートは男にかばんを持って行けと言いますけど、
彼は本当に大変な事態だから来て欲しいと言うのです。でも、場所は言いたくないと。
そんな彼の真剣さにクヌートは彼の指示道理に車を走らせます。
人気の無い雪道を何度も曲がった先にある山小屋の中では、彼の妻が出産を迎えていました。
町のおもちゃ屋のウィンドウを見つめていた少年トマス(モッテン・イルセン・リースネス)に
学校の先輩ビントゥ(サラ・ビントゥ・サコール)が声をかけます。
うちはイスラム教だからクリスマスは祝わないのという少女にトマスはうちもだよと応えます。
ちょっと嬉しくなった彼女はトマスを家へ遊びに来るように誘いました。
恋人を待つカリンは部屋にディナーとムードを高める明かりを準備して、美しく着飾っています。
恋人クリステン(トマス・ノールシュトローム)が来ると二人はベッドで激しく愛し合います。
二人がこの物語で一番幸せなカップルかと思っていたら、クリステンは出かける仕度をしていました。
彼は家族の元へ帰っていくのです。
彼と言い合いになったカリンは、とうとう一大決心をしました。
町の片隅で物乞いをしていたヨルダン(ライダル・ソーレンセン)は背にしていた店の明かりが
消されたのを機に、缶の中身を見てため息をつきながら立ち上がりました。
しばらくすると、彼は列車から降ろされます。
クリスマスだからと言って無賃乗車は許されないと車掌に言われてしまうのです。
仕方なく暗い雪道をトボトボ歩いていた彼は、暖かな雰囲気のキャンピングカーを見つけます。
傍にあったトラックに彼が手をかけると、突然に警報機が大きな音を出し始めました。
怒りながらキャンピングカーから飛び出してきた元気な女性は
偶然にも彼を良く知るヨハンヌ(イングン・ベアテ・オイエン)でした。
それにしても、ひとつひとつのエピソードが心を揺さぶるような作品でした。
ある意味、ノルウェー版ラブアクチュアリーなのですけど、それぞれのエピソードが切ないものばかりです
日本人の年末年始が一年の総決算なら、
ここではクリスマスイブからクリスマスにかけてが一年の総決算なのですね。
そんなクリスマスを迎えるからこその、人々の心の動きが何とも切なかったです。
それはまるで人生への祈りのようにも感じました。
ラストシーンに映し出されたオーロラは、出産を終えた若い夫婦を祝福しているように見えました。
コソボで厳しい人生を生きてきた二人の未来への希望を感じると共に、
せめて1年のうちこの日だけでも、みんなが幸せになれますようにと願わずにはいられなかった1本です。
監督:ベント・ハーメル 出演:トロン・ファウサ・アウルヴォーグ フリチョフ・ソーハイム サラ・ビントゥ・サコール モッテン・イルセン・リースネス ニーナ・アンドレセン=ボールド トマス・ノールシュトローム ライダル・ソーレンセン イングン・ベアテ・オイエン
2010年 ノルウェー/ドイツ/スウェーデン 原題:HJEM TIL JUL/HOME FOR CHRISTMAS
(20111213)
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公式サイトはこちらへ http://www.christmas-yoru.jp/