エミリオ・エステヴェスが父マーティン・シーンを主演に監督・脚本で創り上げたヒューマン・ドラマです。
サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路を歩く物語は以前に「
サン・ジャックへの道」を観たことがあったので
今作ではどんなドラマを見せてくれるのだろうかと楽しみにしていました。
辛い現実にぶつかってしまった人たちの心の再生を静かな視線で描いているような作品でした。
自分自身を受け止められる人になりたいなあと感じました。
ひとり息子の死から始まる物語です。
カリフォルニアで眼科医を営んでいたトム(マーティン・シーン)は、突然に息子の死を知らされます。
40歳の息子ダニエル(エミリオ・エステヴェス)は世界を知りたいと一人旅をしている最中でした。
早速、フランスへ向かったトムは、息子がサンティアゴ・デ・コンポステーラへ向かう巡礼の旅の初日に
嵐の中で事故死したと教えられます。
呆然としてしまった彼は、担当の警察官から帰国できるように遺体を火葬にするかと聞かれても
何も応えることは出来ませんでした。
宿に戻ってからもずっと無言で考えていたトムは、突然に火葬を申し込みに行きます。
息子の代わりに800kmの巡礼の旅を踏破しようと決心したのです。
当然、その大変さを知っている警察官は無理だと止めますけど、トムは耳を貸しません。
そして、小さな箱に入った遺灰を手に宿へ戻ると、息子のバックパックを背にスペインへと旅立ちました。
それにしても、美しい風景に囲まれた旅でした。
ただし、主人公のトムはそんな風景を楽しむ余裕はありません。
偶然に旅を共にすることになった3人の旅人たちにも、彼の歩き方はイラつきを与えるほどです。
でも、人それぞれが抱える悩みの苦しみの大きさは、その人にしか分かりません。
物語が進むにつれて、トムだけでなく他の3人ともそれぞれに悩みを抱えながら歩いていることや、
現状の自分を否定しながら歩いていることに気付きます。
そして、旅の終わりに彼らは、自分自身が本当は何を求めていたのかを知ることが出来ました。
観終った時、自分を見つける旅に出られた彼らがちょっと羨ましく感じました。
いつかこういう旅に出られる日が来るといいなと思った1本です。
監督:エミリオ・エステヴェス 出演:マーティン・シーン エミリオ・エステヴェス ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン デボラ・カーラ・アンガー ジェームズ・ネスビット
2011年 アメリカ/スペイン 原題:THE WAY
(20120608)
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