王様とボク

やまだ ないと著の同名コミックを前田哲監督が映画化したファンタジックな青春ドラマです。
原作は未読ですけど、監督さんがずっと頑張って創り上げたと聞いてどんな物語か気になっていました。
子供と大人の間で揺れ動く18歳の心を優しく見つめているような作品でした。

無邪気な笑顔が印象的でした。

18歳の誕生日を迎えた冬の夜から始まる物語です。
18歳になって恋人のキエ（二階堂ふみ）と結ばれて嬉しいはずの翌朝のこと。
ミキヒコ（松坂桃李）はふとしたことから12年間も逢っていない幼なじみのモリオのことを思い出します。
モリオは6歳の時、ミキヒコやトモナリと遊んでいた時に起きた事故で頭を打って
昏睡状態のまま18年間も眠り続けていたのです。
モリオのことを、涙を流しながら思い返したミキヒコを見たキエは、とても哀しい気持ちになってしまいます。

数日後、12年間眠り続けて目を覚ました少年のことがニュースで流れました。
きっとモリオのことだと確信したキエとミキヒコは、お土産を持って病院へ駆けつけます。
しかし、受付に行っても面会は断られ、がっかりした二人が病院のロビーに留まっていた時、
モリオが病室からいなくなったという騒ぎを聞きつけました。
これはチャンスと病院へ忍び込んだ二人は、運良くモリオと再会します。
でも、18歳の身体になっても心が6歳のままのモリオ（菅田将暉）は、
18歳になったミキヒコのことも怖がって泣いているばかりでした(T_T)

それにしても、切なさと希望が交差するような物語でした。
18歳になって大人という次元へ向かう前のミキヒコの逡巡と未来の見えない不安。
無邪気な6歳のまま成長してしまったモリオが向かい合わなくてはならない厳しい現実。
束の間の楽しい時間を二人で過ごしたミキヒコがモリオを何とかしなくてはと決心した時、
ミキヒコはバイクに乗って走り始めます。
その気持ちはモリオを助けるのではなく、ミキヒコの心を救うためなのかも知れないなと感じました。
そして、今を迷っている彼やモリオは、きっと現実を乗り越えていく力を蓄えていくだろうと思いました。

笑顔で笑う子供たちが映し出されたエンドロールを観ながら、
これからを生きる彼らの明るい未来を信じたくなった1本です。



監督：前田哲　出演：菅田将暉　松坂桃李　相葉裕樹　二階堂ふみ　松田美由紀
2012年　日本
（20120922）

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