窪美澄著の同名小説をタナダユキ監督が映画化した青春群像劇です。
うっかりしていたら上映が終わってしまいそうと、原作は未読のまま慌ててチャレンジしてみました。
予想以上にディープでやるせない想いが交錯する、胸にドーンと来るような物語でした。
みんな幸せを掴むのがとても難しそうな人たちでした。
高校生の卓巳と主婦の恋をメインに、卓巳の母や同級生の良太の姿も深く描いた群像劇です。
卓巳(永山絢斗)と里美(田畑智子)の恋はイベント会場での出会いから始まります。
“あんず”こと里美はアニメキャラクターが大好きで、イベント会場に来てはコスプレを楽しんでいます。
卓巳自身はアニメやコミックに興味は無かったのですけど、里美に声をかけられてアドレスを交換しました。
出会って間も無く、二人は恋に落ちます。
実は里美は結婚をしている主婦なのですけど、夫(山中崇)と共に子供の出来にくい身体で、
義母(銀粉蝶)から不妊治療を強要される日々に疲れていました。
今の彼女にとっての唯一の喜びは卓巳との逢瀬だったのです。
でも、それは里美の様子を怪しんだ夫に盗撮されていました。
それにしても、リアルな痛みが伝わってくるような物語でした。
子供をあまり望んでいない夫と、孫を欲しがる義母との板ばさみの日々に苦しむ里美。
里美とのアニメコスプレのベッドシーン映像をネットや高校でばら撒かれてしまう卓巳。
親に捨てられ、認知症の祖母に振り回されながらも
アルバイトでギリギリの生活をしている良太(窪田正孝)。
生きるのが難しい時代にもがきながらも、なんとか生きていこうとする彼らの姿が心に残りました。
そして、小さな優しさがそれぞれの心に届いた時、少しだけ彼らには前に進む勇気が生まれました。
女手一つで卓巳を育てている母(原田美枝子)の助産師として姿や、
その立場を超えた母としての切なる願いには胸が痛くなりました。
観終った時、本当に全ての子供たちをお守り下さいと願ってしまった1本です。
監督:タナダユキ 出演:永山絢斗 田畑智子 窪田正孝 小篠恵奈 田中美晴 三浦貴大 銀粉蝶 梶原阿貴 山中崇 山本浩司 原田美枝子
2012年 日本
(20121212)
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