強い願いと共に伝えられる戻ってくるなという言葉が印象的でした。
ある裁判から始まる物語です。
旭川の地方裁判所に赴任していた判事の鷲田(佐藤浩市)は、被告人の顔を見て驚きます。
大学時代の恋人で突然に居なくなってしまった結城冴子(尾野真千子)だったのです。
彼女は失踪した後に結婚して旭川へ来ていましたが、今はひとりでした。
裁判が終わった後日、鷲田は冴子が開いているスナックへ向かいます。
現在、彼は妻と幼い息子を東京に残して単身赴任中で、月に一度は冴子のいる地域へも来ていました。
二人は昔のような仲になります。
でも、鷲田の赴任期間が終わって東京への転勤が決まった時、離婚するから地方で一緒に暮らそうという
彼の言葉に肯きながらも、冴子は一緒に旅立とうとした朝、駅で列車に飛び込んでしまいました。
それから25年の年月が過ぎ、現在の鷲田は釧路で国選弁護専門の小さな法律事務所を開いていました。
結局、東京へは戻らず、離婚して一人で北海道に残ったのです。
ある日、朝早くに弁護を担当した椎名敦子(本田翼)が裁判後に法律事務所を訪ねて来ました。
事件後に失踪した恋人を探して欲しいという依頼に対し、
鷲田は国選以外の仕事は受け付けないという方針を伝えます。
すぐに帰ってもらおうと思っていた鷲田でしたけど、ふと気が向いて朝食を振舞います。
その食事のメイン料理は、昨晩のうちに準備していたザンギでした。
それにしても、心に沁みる作品でした。
ストーリーの中では鷲田、冴子、敦子という3人の人生の選択が描かれています。
キャリアを捨てて愛を得ようとした鷲田。
自分が他人の人生の負担にならないように死を選んだ冴子。
自分の道を自分で歩もうと、新しい人生へ向かおうとする敦子。
鷲田は冴子の死によって人生を見失い、敦子の笑顔によって自分の人生を見つめ直します。
そんな鷲田の姿に観ている方も救われた気持ちになりました。
そして、敦子の“生きているだけでいい”とはっきりと告げた姿が心に残りました。
観終った時、この映画がクロージング作品に選ばれたのも分かるなあとしみじみと感じた1本です。
監督:篠原哲雄 出演:佐藤浩市 本田翼 中村獅童 和田正人 音尾琢真 泉谷しげる 尾野真千子
2015年 日本
(20151107)
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公式サイトはこちらへ http://www.terminal-movie.com/