アベルの後姿をずっと見つめているドノヴァンの姿が印象的でした。
ある男の1日から始まる物語です。
アパートの小さな部屋で絵を描いていた男は、絵筆を置くと仕度をして外へ出かけました。
その男の跡をタクシーで乗りつけた別の男が尾行をし始めます。
実はアパートの男ルドルフ・アベル(マーク・ライランス)にはスパイ容疑が掛けられており、
彼はFBIにマークされていました。
間も無く、FBIに家宅捜索されたアベルは逮捕され、取調べやアメリカへの協力要請がなされますが
彼は重要機密を全く語らず、アメリカへの協力も拒否しました。
そんな状況の中、ジェームズ・ドノヴァン(トム・ハンクス)に裁判弁護の話が舞い込みます。
アベルの裁判をきちんと行って、アメリカの正当性や公平性を世に知らしめようとしたのです。
事務所の意向もあり、家族の反対はありましたけど、ドノヴァンは弁護を引き受けることにしました。
それにしても、何だか国に使われる人たちって気の毒ですね。
命を掛けて任務に挑んでも、何かが起きてしまうと助けもほとんどありません。
しかも、一度敵の手に落ちてしまうと、味方からも疑惑を持たれてしまいます。
苦労して祖国へ戻ってきても、平穏な日々を取り戻すのは大変そうです。
この物語ではアメリカでスパイを行っていたアベルの弁護を担当するのがドノヴァンです。
彼は仕方なく引き受けた弁護にも熱心に取り組み、死刑ではなく30年間の懲役刑を勝ち取りました。
また、控訴した最高裁判所では無罪の一歩手前までたどり着きます。
でも、やはり有罪になってしまった裁判の結果に、ドノヴァンは“疲れた”と落ち込みます。
ドノヴァンにはある意味裏表の無い、アベルの一徹した姿勢に惹かれたのです。
それは自分の道を貫こうとする人間としての真摯な姿なのかも知れません。
そんなアベルを演じたマーク・ライランスの演技に観ている方も引き込まれました。
そして、トム・ハンクスの自然体な演技と共に心に残りました。
また、その後の東ドイツでの人の命を掛けた駆け引きを取り巻く複雑な状況も興味深かったです。
観終った時、ソ連が東ドイツでドノヴァンに仕掛けた心理戦の巧妙さに怖いなあと思いつつも
普通の弁護士でもこんな事態に巻き込まれてしまうのが冷戦から続く世界なのだろうなあと感じた1本です。
監督:スティーヴン・スピルバーグ 出演:トム・ハンクス マーク・ライランス スコット・シェパード エイミー・ライアン セバスチャン・コッホ アラン・アルダ オースティン・ストウェル ウィル・ロジャース ミハイル・ゴアヴォイ
2015年 アメリカ 原題:BRIDGE OF SPIES
(20160110)
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公式サイトはこちらへ http://www.foxmovies-jp.com/bridgeofspy/