心からの笑顔には何ものにも敵わないパワーがあるなあと感じました。
離婚後に会社を辞めて東京から故郷の函館へ帰ってきた白岩(オダギリジョー)は
職業訓練学校で大工のコースを受講しながら一人暮らしの日々を送っていました。
学校帰りに弁当とビール2缶を買って、引越のダンボールが詰まれたままの殺風景な部屋で
独り静かに夕食をとる毎日です。
でも、家族とは顔を合わせたくなくて、毎週のように来る義弟からの食事の誘いを断っていました。
職業訓練学校には様々な経歴で年齢もバラバラな男たちが大工の仕事を学んでいました。
アクの強いメンツの中でも上手く会話を合わせながら、さり気無く距離を置いている白岩は、
仲間の中では誰からも嫌われることのない出来た人という認識を得ています。
そんな無難に流れている日々の中、学校の帰り道で
鳥の求愛の様子を物まねしている若い女性(蒼井優)を見かけます。
その自由で踊るような表現を見た白岩は思わず見入ってしまいますけど、女性に睨まれてしまいます。
数日後、同じコースで学ぶ代島(松田翔太)に誘われて飲みに行った店で白岩はその女性・聡と再会しました。
それにしても、心に様々な波風を起こすような作品でした。
主人公たちが抱える孤独や未来への不安がじんわりと伝わってきます。
それは生きている人の誰もが抱えるものかも知れません。
白岩が出会った聡は女性でありながら男性のような名前を付けられた事で、幼い頃から苦労してきた人です。
彼女は自由な心を持ちながらも、人の視線を気にするところがあります。
白岩も聡もお互いに惹かれ合っているのに、一緒に居ると
白岩の気付かないところで聡の心は傷付いていきます。
ようやく自分を見つめることの出来た白岩の心の変化と共に動いていく
二人の恋の行方から目が離せませんでした。
何と言ってもオダギリジョーさんの静かな佇まいと、蒼井優さんの輝くような存在感には圧倒されました。
観終った時、ずっと心の片隅に残しておきたい作品に出会ったなあと感じた1本です。
監督:山下敦弘 出演:オダギリジョー 蒼井優 松田翔太 北村有起哉 満島真之介 松澤匠 鈴木常吉 優香
2016年 日本
(20160902)
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公式サイトはこちらへ http://overfence-movie.jp/追伸
この映画は試写会で観ました。公開は9月17日以降の予定です。