話題の作品をようやく観てきました!本当に“ダーク”ファンタジーでした~

1944年スペイン。臨月を迎えたお母さんとオフェリア(イバナ・バケロ)は山道を行く車に乗っていた。
新しいお父さんのもとへ行って一緒に暮らすためだ。
彼はフランコ反乱軍の将軍で、山岳地帯に逃げ込んでいるゲリラ軍と闘っており、
もうすぐ生まれてくる赤ちゃんを自分の監視下で育てたいと思っていた。
山道の途中での休憩中に、オフェリアはカマキリのような形をした生き物に出会う。
彼女は妖精?と笑顔で話しかけ再び歩き出すと、今度はこぶし大の石につまずいた。
ふとその石の形状を気に留めた彼女が石を拾い上げて周りを見渡すと、不思議な石像が立っていた…

観た人によるのだと思うのですけど、私はものすごく怖かったです(T_T)
じわじわと来る孤独感、圧迫感そして絶望感が、まるで悪夢を見ているように迫ってきました。

主人公オフェリアにとっては、現実は悪夢のようです。
好きだった父は戦争で亡くなり、遠い山岳へと連れて来られます。
母は臨月を迎えて具合がかなり悪いし、新しい父はフランコ叛乱軍の将軍で残忍無慈悲な男。
心を許せる使用人も可愛がってくれるけど、父の住みかから彼女を連れ出すことは出来ません。
そんな中、彼女は牧神[パン]から自分のことを異界の王女の生まれ変わりだと告げられます。

その牧神の出した3つの試練は怖いものばかり。
なんと言っても、少女と対峙する生き物たちがめちゃくちゃ不気味です。
例えば第一の試練は、木に巣食っている蛙から鍵を取り出すというものですけど、
その死にかけている巨木の中はドロドロで虫もうじゃうじゃいて、しかも蛙はものすごく大きいのです。
その試練だけで私は逃げ出します~と思ってしまいました…

また、新しいお父さんである将軍は人の命など何も気にしない人物です。
身だしなみには気を使う反面、自分に逆らう者には容赦は無く、簡単に人を殺してしまいます。
例え誤解で人を殺したとしても全く気にはしません。まるで第二次世界大戦のドイツ軍の人のようです。
そんな彼にとっては自分の血を受け継いで生まれてくる赤ちゃんだけが大切であり
赤ちゃんを産むお母さんでさえ二の次なのです。
この作品は少女の冒険だけではなく、内戦中のスペインの実情も描いていますけど、
その内戦の酷さを端的に表しているのがこの将軍の人となりではないかと感じました。

それにしても、この次期から始まる独裁政治が1970年代まで続くのですよね。
先月『サルバドールの朝』を観ていたので、余計に哀しさを感じました。

この作品にそれほどの怖さを感じたのは何故だろうなあ…
何か深層心理に触れるシーンでもあっただろうかと思いつつも、
悪夢の中でも勇敢に前進したオフェリアの健気な姿がとても印象的だった1本です。

監督:ギレルモ・デル・トロ 出演:イバナ・バケロ セルジ・ロペス マリベル・ベルドゥ
2006年製作 メキシコ/スペイン/アメリカ 原題:EL LABERINTO DEL FAUNO/PAN'S LABYRINTH
(071121)