2006年に再演されたミュージカル「コーラスライン」のオーディション風景に
1975年に上演された最初の「コーラスライン」の創作過程を合わせたドキュメンタリーです。
“舞台に立ちたい”という熱い想いが真っ直ぐに伝わってくる作品でした。

「コーラスライン」と言えば役者にとっては夢の舞台です。
ほんの少しでも舞台に立って踊りたいという切実な想いが込められている物語だからです。
どんな役者たちも同じ思いをしながら日々を送ってきているのです。

この「コーラスライン」は実話を元に作られています。
1974年。新しいミュージカルを考えていた振付師&演出家のマイケル・ベネットは
22人のダンサーたちを集めて自分たちの夢や想いを語らせました。
その12時間に及ぶ会話をテープに取り、彼らのキャラクターと話を脚色して舞台劇を創り上げます。
なので初演のメンバーの中には、本当に自分自身を舞台で演じている人もいます。
今回の再演では、初演のメンバーで現在は振付師をしている人も審査員に入っています。
“自分を選ぶ”のは、また気分の違うものでしょうね。

再演にあたっての応募者は19人の役に対して3000人以上です!
履歴書に“ダンスが出来る”と書いてあれば、審査員たちは一度は見たそうです。
一次審査は集団でのダンス審査。ここで本当に踊れる人が残ります。
4ヵ月後の2次審査では一人ずつ審査員たちの前で台詞を言い、役に合うかどうかを審査されます。
そして8ヵ月後の最終審査では誰が選ばれてもおかしくないほどに踊りも歌も演技も上手い人たちが
スポットライトを浴びながら舞台の上でオーディションを受けます。
それぞれのシーンで選ぶ者、選ばれる者の想いが交差していきます。

厳しいなあと思ったのは、結局は最終の舞台オーディションで上手く出来なければ
8ヶ月の努力が実らないということ。
以前はジプシーのような毅然としたパワーを感じさせる演技をしていた女性が
最終審査では感傷的な演技になり、演技が変わったと言われて悩むシーンがあります。
8ヶ月は長いです。その間に恋人と別れるなど、彼女の人生は動いています。
8ヶ月前の演技が思い出せなかった彼女は、その審査で落とされてしまいました(T_T)

再演の舞台では、難関を乗り越えて晴れの舞台に上がった19人の笑顔が映し出されます。
残念ながら選ばれなかった役者たち、
そして舞台でスポットライトを浴びることが出来た役者たち一人一人に
拍手を贈りたくなった1本です。



監督:ジェームズ・D・スターン
2008年 アメリカ 原題:EVERY LITTLE STEP
(20081119)