アメリカとの国境に隣接するメキシコの工業都市を舞台に描いたサスペンスです。
観終わった時、この作品が実際の事件を元に作られたという事実を改めて思い出して
心がドーンと重くなりました(T_T)

シカゴの新聞社に所属する記者ローレン(ジェニファー・ロペス)は上司(マーティン・シーン)から
アメリカとの国境に近いメキシコの街フアレスで発生している女性連続殺人事件の取材を命じられる。
彼女は難色を示すが、上司と海外特派員の地位を約束されメキシコへと旅立った。
早速、一緒に仕事を手がけたことがある地元紙の敏腕記者ディアス(アントニオ・バンデラス)に
コンタクトを取った彼女だが、危険すぎると諌められるだけ。
だが、殺されたと思っていた一人の被害者エバ(マヤ・サパタ)が息を吹き返して
家へ戻ってきたことを知ったローレンは、エバを保護すると共に事件の調査を深めて行く。
そして、事件は大きく動き始めた…

事件の被害者と共に戦いながら、なんとか事件に迫ろうと頑張るローレンの姿に熱くなりました。

この映画は本当に起きている事件を元に作られています。
1993年からアメリカ国境に程近い街で発生している連続殺人事件。
被害者の女性たちはみなその街にある輸出用商品の工場で働いている女性たちです。
24時間稼動している工場で低賃金の長時間労働を課せられている女性たちは
みな貧しい家に育ち、職を求めて遠い故郷から街へとやって来ています。
そんな行方不明になっても騒ぎにならないような女性たちを狙って連続殺人事件は起き続け、
その発生件数は15年間の間に500件とも5000件とも言われています。
こんな大きな事件のことを、この映画で初めて知りました。
事件のこともショックでしたけど、この事件がそれほどまでに黙殺されてきたことがショックでした。

経済や政治的なことが複雑に絡み合っている背景の詳細は、映画ではあまり分からなかったですけど、
巨額な利益の中で貧困層の人々の命が蔑ろにされていると感じました。
大きな経済の中では彼らの命などは、きっと幾らでも取り替えのきくものなのでしょう。
でも、彼女たちにも家族はいるし、無残にも殺された悲しみや無念さは計り知れません。
主人公のローレンは、最初は昇進のためにメキシコへと飛んで行きますが、
段々と事件にのめり込むうちに、被害者になった人々の立場になって考え、動いていきます。
そして、ただの仕事ではなく報道者としての信念として、この事件に取り組むようになります。

この作品ではエバの一件に関しては一応の決着はつくものの、事件そのものの解明はされていません。
それは、実際には今でもこの連続殺人事件が解決されていないからです。
そんな闇の事件にメスを入れるような作品を作り上げたスタッフとキャストの熱意に拍手を贈るとともに
いつか事件が解決することを切に願った1本です。



監督:グレゴリー・ナヴァ 出演:ジェニファー・ロペス アントニオ・バンデラス マヤ・サパタ
2006年 アメリカ 原題:BORDERTOWN
(20081111)