今日は母エレーヌ(エディット・スコブ)の75歳の誕生日。
長男フレデリック(シャルル・ベルリング)、長女アドリエンヌ(ジュリエット・ビノシュ)、
次男ジェレミー(ジェレミー・レニエ)の3人と彼らの家族たちが集まっていた。
久々に気持ちの良い庭でテーブルを囲んでの集いに、年老いた母も楽しそうに笑っていた。
だが、ふとフレデリックと二人きりになった時、自分が死んだ後の話を始める。
そんな話をしたくないという長男に対して、
母は今しかないとばかりに遺産となる美術品の解説を続けた。
そして、アメリカに住む妹や中国で仕事をしている弟はこの家には執着しないと考え、
長男に売ってしまうように主張する。
そして数ヵ月後、突然、母は亡くなってしまった…
庭や家の中に漂う空気と心地よさそうでした~
パリ近郊の小さな町にある家。
周囲にはまだ自然が残っていて爽やかな空気を運んでくれます。
ここは母エレーヌの想い出がつまった家です。
夫を亡くし、有名な芸術家である大叔父と暮らしていた家なので、芸術品もいっぱい。
美術館から寄贈の依頼がくるような貴重な品も家に溶け込むように使用されています。
一度壊したら元には戻らない宝物のような家なのです。
でも、3人の子供たちは独立し、そのうちフランスには長男しか残っていません。
経済学者となって家族を持った長男は、この家や美術品に愛着を持っています。
それに対して、長女は芸術関係の仕事でアメリカに拠点を置いているし
次男は妻と3人の子供を連れて上海への移住を考えています。
そんな二人には、もう母の家は必要ありません。二人は家を売ろうと主張します。
子供たちの代で少しずつ価値観が変わってきているのです。
そして、母はそんな子供たちの心をちゃんと理解していました。
それにしても、家の至るところにある美術品たちがとても素敵でした。
この家では長年、高価な美術品でも普通に使用されてきました。
花瓶には花が挿され、ティーセットはちゃんとお茶の時間に並べられます。
机は机として使われ、棚にも物が仕舞われています。
後に美術館に展示されている様子が映るのですけど、貴重な物として展示されているよりも
日常品として家の中で使用されている方が、美術品たちも居心地が良さそうに見えました(^^ゞ
観終わった時、この映画はクロッキーのような作品だと言ったジュリエット・ビノシュの言葉が
なんとなく分かった気がした1本です。
監督:オリヴィエ・アサイヤス 出演:ジュリエット・ビノシュ シャルル・ベルリング ジェレミー・レニエ エディット・スコブ
2008年 フランス 原題:L'HEURE D'ETE/SUMMER HOURS
(20090312)
追伸
この映画はフランス映画祭で観ました。公開は5月頃の予定です。